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歯科医としての履歴と抱負
1962年に東京歯科大学を卒業しましたが、下町にあったクラブの先輩の診療所で歯科治療一般の治療について基礎から学びました。
その後、隣接医学を学ぶ目的で東京慈恵会医科大学の歯科学教室に入室しました。歯科学教室では佐藤クレイトン先生(Dr. Clayton Sato)から口腔外科の基礎と臨床を学び、全身と歯科治療との関連、歯列矯正の基礎についても同時に学ぶことができました。
1966年、ニューヨーク市のグッゲンハイム小児歯科診療所のフェローシップを得て渡米し、1年間勤務しましたが、そこでは米国式の合理的な歯科診療法を経験することができました。
その翌年西海岸のオレゴン州立大学歯学部に移り、クラウン・ブリッジによる欠損補綴についての最新の知識と技術、および理論を学びました。主任教授のDR.リヒター(William .A. Richter)とDR.上野(Dr.Ueno.Hiroshi)から咬合理論の基礎を正式に学んだのもこの時でした。
また同じオレゴン大学の出身で,当時日本で活躍されていたDR.ビーチ(ダリル・R・ビーチ)にもここで出会い、歯科医師としてのその後に大きな影響をうけました。現在採用している診療方システムのほとんどはDR.ビーチから教わったものであるといっても過言ではありません。
さらに大きな出会いは、シアトルの開業医であったバーナード・ジャンケルソン(Bernard Jankelson)との出会いでした。バーナード・ジャンケルソン先生は高名な補綴の専門医で、独自の咬合理論を提唱されていていました。
講演のために来日され、日本講演のための通訳を探しておられました。オレゴン大学の上野先生からのご推薦でお手伝いをすることになりました。
講演が進むにつれて、その考え方のユニークさに驚かされました。それまでアメリカの大学で学んできたものとは正反対といってもよい理論で、通訳しながら理解するのに苦労しました。
それまでの咬合理論はあごの関節(顎関節)を中心に組み立てられた理論※でしたが、彼の考え方はあごを動かす筋肉(咀嚼筋)を中心とした考え方だったのです。
神経筋機構理論(Neuromuscular theory)とよばれている彼の理論は、あご(顎)を動かして食事をしたり、会話をしたりする時に最も重要な働きをするのは筋肉と神経の協働作業であるというものでした。
これだけを聞くと当たり前すぎて誰も反論はできないと思います。しかしこんな簡単なことでもそれから40年経過した今日、歯科界ではいまだに受け入れられていないことには驚かざるを得ません。
これを読んでいただいている多くの患者さん方の痛みや苦しみのほとんどは、あご(顎)を中心とした頭頚部の筋肉の痛みです。
見方を変えて筋肉を中心に考えていくと、顎関節症も頭頚部の痛みも、顔面の痛みも、原因が明らかにになってきます。
そのために診断も治療法もはっきりしてきます。そして原因不明で治療法がないといわれたこれらの不快症状で苦しむ患者さんの苦痛を取り除くことができるようになりました。
ただし筋肉という一見捉えどころのない器官を診断するためには、肉眼で見るだけでは診断することはできません。
エレクトロニクスを応用した最新の診断機器が開発されたことでようやく、科学的で客観的なデータに基づいた噛み合わせの治療ができるようになりました。
これまでのように医者の勘と特殊な能力だけに頼った治療ではなく、科学的な根拠にもとづいた治療ができるようになりました。
1970年代の初めにバーナード・ジャンケルソン先生に出会ってからは、かれの理論に心酔し、とりつかれたように夢中になり、臨床への応用を試みました。しかし意外なことに思った通りの結果はなかなか得られませんでした。
その後約20年間の間に重篤な噛み合わせ症候群の患者さんを救いだすことが出来たのは、たったの2症例だけでした。一時は彼の理論そのものに疑いを持ち始めたこともありましたが、その原因はある種の思い違いと技術の未熟さのためであったということが後で分かりました。
今では彼が残していってくれた理論と臨床術式の有難さを毎日のように感謝しながら診療をさせていただいております。その結果として、噛み合わせ症候群で苦しむ多くの患者さんのお役にたつことができています。
治療の結果患者さんが快方に向かい、明るい笑顔を取り戻してくださる様子に接するたびに、歯科医としての無常の喜びと生きがいを感じさせていただいております。
今後は出来るだけ多くの患者さんの治療に取り組むのと同時に、受け継いだ貴重な理論と術式を後進の歯科医師に受けついでいくことに力を注いでいきたいと考えております。
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