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噛み合わせ症候群はなぜ起こるか
当センターでは噛み合わせ症候群の原因はあご(顎)の位置の異常であると考えて治療をおこなっています。そしてその結果多大な成果をあげています。
噛み合わせ症候群は、非生理的なあごの位置で咀嚼などの機能がおこなわれるために引き起こされています。つまり本来機能をおこなうのには適さないあごの位置で機能がおこなわれるために、あごの関節や筋肉に無理な負担が強いられるからです。
つまり普段ものを噛んでいる時の顎の位置(習慣性咬合位)が、顎関節や咀嚼筋が健康な機能を営むために都合のいい顎の位置(生理的下顎安静位)と一致していないことが原因です。
上下の歯が噛み合ったときに、顎が安静な位置からずれるかどうかは、ご自身で体験してみていただくと簡単に理解していただけます。
まず姿勢も正して、目を閉じてみてください。身体の力を抜き、顎の力も抜くようにします。そして上下の唇を軽く合わせた状態で、上下の歯はわずかに(1~2ミリ位)離しておきます。できるだけリラックスして楽な状態をつくります。このときの状態が下顎安静位です。
つぎにこの状態を維持しながら静かに、なおかつゆっくりとあごを閉じていきます。このときには上下の歯を噛み合わせるという意識は捨ててください。 ただ静かにあごを上に挙げていくという感覚でゆっくりと閉じるようにします。非常にゆっくりと髪の毛一本ぶんずつゆっくりと閉じていきます。
その時に上下のどこかの歯が軽く接触するのを感じることができると思います。
そうしたら、そこでそれ以上閉じるのをやめて、どの歯が接触しているのかを自覚してみてください。
どの歯が最初に接触していますか?
今度はその状態からすべての他の歯も全部同時のしっかりと噛み合うまであごを閉じていきます。
このときあなたは次のうちのどの閉じ方で閉じましたか?
- 最初に接触した歯を頂点として滑るように閉じていき、すべての歯がかみ合うまで閉じていったが、あごは最初の所より少し移動した(ずれた)のを感じた。
- 何度試してみても、最初に当たる歯を自覚することはできずに、すべての歯が同時にかみ合い、あごがずれたり移動したりすることを自覚することが無かった。
1)に相当する人は、楽にしているときの顎の位置(安静位)と歯を噛み合わせたときのあごの位置(咬合位)が一致せずに、かむたびにあごがずれる人です。
2)に相当する人はあごはずれることなく、安静位と咬合位が一致している人です。
この二つの位置が一致しない人は、下顎が安静で楽な位置から全部の歯がかみ合う位置まで、かむ度にあごがずらされることになります。
その位置(咬合位)はあごを動かしている筋肉にとって、安静を保てる楽な位置ではなく、長いあいだには筋肉が緊張して疲労や硬直を起こす可能性があります。
もっともこれだけですべての人が筋肉や顎関節に異常な症状を訴えるわけではありませんが、人間はすべての歯を同時に噛み合わせるということを、1日に2000回以上も行っていますので、そのたびに筋肉や顎関節に無理を強いることになります。
その結果筋肉や顎関節には破壊的な影響がもたらされます。そのためほとんどの患者さんは歯を噛みしめているときに違和感を感じています。
このことをもっとわかりやすい例で説明してみます。歯ではなく身体の別の部分で考えるとわかりやすいかもしれません。
たとえば片方だけが異常にすり減った靴を履いていたとします。このような靴を履いて長い時間歩くと、足のふくらはぎなどの筋肉が普段より疲れたり、痛んだりします。ひどい場合には筋肉だけでなく、膝の関節までも痛めることになります。
原因は、歩く度に足を靴の傾きに合わせてひねったり、曲げたりして調整しながら歩かなければならないからです。
足の筋肉や関節が普段とは異なる無理な動きをしなければならないために負担が増し、筋肉は緊張して疲労が蓄積していきます。筋肉が疲労してくると、膝の関節を保護する働きも弱くなり、やがて関節にも無理な負担が加えられるようになります。
これは足の筋肉や関節が本来のかたちではない状態(機能をおこなうのに適さない姿勢)で機能をすることを強いられたからです。
これをふたたび歯のかみ合わせにあてはめて考えてみます。靴が片側だけ不均衡にすり減って低くなったということは、歯が片側だけ不均衡にすり減っていることに相当します。(下の図の左側)この状態で長く噛んでいると、顎はすり減って低くなった状態に合わせて、曲げた状態で機能しなければならなくなります。(右側の図)

この状態を長く続けていると、顎を動かしている筋肉や顎関節は普段と違った動きを強いられるために筋肉が緊張し、血液の循環が悪くなって、筋肉の中に乳酸などの疲労物質がたまり、痛みを感じるようになります。
歯がすり減った側の関節は、無理に上下の歯を合わせようとする動きのために、あごが傾き、関節頭が限界をこえて上方に移動するために、関節内の構造を圧迫します。その結果、クッションの役割を果たしている、関節円盤などが脱出していわゆる顎関節症が発症します。
これが噛み合わせ症候群が発症するメカニズムです。
さらにこのことは、頭部の姿勢にも影響します。

顎が歯のすり減った側に傾いたことは、頭全体の傾きに影響します。その結果、頭を支えている筋肉や頸椎などにも影響し、筋肉痛(肩こりや首筋のこり)などの原因になります。
その影響が及ぶ範囲は、顎の周辺だけにとどまりません。
あごの骨はちょうど頭部と胴体の中間にあって、上下左右から筋肉や靭帯で結ばれています。ものを噛むという行為は咀嚼筋だけではなく、首や肩、頭部の筋肉も参加する協働作業です。
そのため顎の筋肉の異常は頭部や頚部、背中や腰、胸の方の筋肉にまでその影響が及びます。
人間の重い頭は、7つの骨からなる頸椎の上に微妙なバランスを保って乗っているような構造をしています。
ちょうど重いボウリングのボールが一本の指で支えられているような不安定な構造をしています。それを周囲から無数のゴムバンドのような筋肉で固定しているような状態を想像してみていただくとわかりやすいかもしれません。

重いボウリングのボールの下には下の顎がぶら下がっていると思ってください。この下顎も、重い頭と胴体の間で無数のゴムバンドで上下左右に結ばれています。
あごの位置が少しでもゆがんだり、ずれたりすると、無数のゴムバンドのうちのどれかが、ゆるんで縮んだりします。それを補うために、他のゴムバンドは伸びたり縮んだりして補わなければなりません。
このように微妙なバランスの調整は、筋肉とそれを支配している神経の絶妙な協同作業によっておこなわれていると考えられています。これを神経筋機構(ニューロマスキュラーシステム)※とよんでいます。
頭蓋骨と胴体の間にある下顎骨の位置は、頭部と胴体の位置関係に重大な影響をもたらしますが、その下顎骨の位置を狂わせるおもな原因は歯の噛み合わせです。
歯が噛み合うことによって狂わされた下顎の位置は、頭蓋と胴体、肩、首、などの位置関係を狂わせ、結果としてその間を結んでいる筋肉や神経、靭帯などに異常な緊張や痛みをもたらします。
これが歯の噛み合わせの異常が全身に波及していくメカニズムです。
このように下顎のわずかな位置の異常が、ドミノ倒しのように全身の骨格間の位置異常へと波及していくことで、全身の姿勢にも重大な影響が現れます。そしてそれぞれの骨格の間にある筋肉や神経の機能障害やさまざまな不快症状を引き起こしていきます。
それゆえ、噛み合わせ症候群は「筋骨格系機能障害(MSD)」※または「顎頭蓋機能障害(CMD)」※などと総称されています。

一般的に正面から見た状態では左右に傾き、肩の高さが左右で異なります。骨盤も左右に傾きます。側面からは首が前傾して"いわゆる猫背(ねこぜ)・出腹(でっぱら)・出尻(でっちり)"になり、お尻と下腹が前後に出た姿勢になります。前後ともS字状にゆがんだ姿勢となり、障害として腰痛などの筋肉症状が出やすくなります。
あごの位置の異常と姿勢の関係は相互に関係し合っています。あごの位置の異常が原因となって姿勢がみだれますし、逆に姿勢のゆがみがあごの位置を狂わせます。
そのためあごの位置を正す治療では、全身の姿勢に最大限の注意を払っておこなっております。
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