舌の違和感から解放されるまでの噛み合わせ闘病日記

舌の違和感から解放されるまでの噛み合わせ闘病日記

症例
北海道のNMさんは、「舌が上の奥歯にあたる」ということが気になりだし、札幌中の医療機関を転々としましたが、満足のいく結果が得られずに日本全国のネットを調べたあげくに当院に来院されました。
症例

来院された当時のNMさんは憔悴しきった様子でしした。顔色も悪く、おどおどした様子で落ち着きががなく、非常に不安そうでした。診療所のそばのホテルに宿泊して通ってこられました。その他ために、1泊2日で集中的に治療させていただきました。とても神経質で治療には細心の注意が必要であったことを思い出します。以下に噛み合わせの学会で症例報告をさせていただいたときのスライドをもとに、「NMさんの噛み合わせ闘病日記」を再現させていただきます。




症例

平成10年(1998年)の秋、上の前歯が出ていることが気になりセラミックのブリッジを作りました。その後左上の奥歯にもセラミックの冠をかぶせました。 その直後から左の舌が奥歯に当たることが気になりだしました。 その2年後に、札幌の口腔顔面外科を受診し、左上の奥歯の冠を作り直しましたが、舌の違和感は改善されませんでした。

平成13年4月 噛み合わせを直す目的で下顎臼歯部にインプラントをいれ、セラミックのBr.を装着した。

しかし噛み合わせが合わず、盛る、削るという調整の繰り返しが始まった。



(本人の手記より)

症例

平成13年に左下の欠損部にインプラントをいれて、その上にセラミックのブリッジを装着しましたが、効果はありませんでした。 その後そこをレジンの仮歯にかえて調整しました。レジンを盛ったり削ったりして調整を繰り返しましたが、効果はありませんでした。

平成14年12月 「舌が歯にあたる」ことを訴えるが、「舌過敏症」と診断され、薬を処方されたが納得できなかった。

このころからいつも歯のことが気になり始め、頭からはなれなくなった。(本人の手記より)



平成15年2月 盛る、削るの繰り返しと噛み合わせの違和感、舌が歯に当たることの不快感、周囲の

無理解などから精神的に不安定となり食欲不振におちいる。 (本人の手記より)

症例

平成15年3月 医師により精神科を紹介される。精神科へ通うことへのショックから倦怠感・不眠症となる。 (本人の手記より)
平成15年4月 医師には「治療の限界」と匙を投げられる。自分自身でも本当の噛み合わせが判らなくなり、毎日鏡とニラメッコで高さやよじれのバランスをとるために爪楊枝を持ち歩き、時には噛み合わせを調節するために脱脂綿をサランラップに包んでそれを噛んで寝ることもあった。 (本人の手記より)
平成15年5月 医師の勧めで全身の検診を受けるが異常はなかった。
歯が噛み合わないもどかしさがすべてを狂わし、2ヶ月以上も仕事が遅れたことも大きなプレシャーになって、倦怠感・ひきこもり・拒食・さらには自殺願望までも出てきた。
「こんな思いはもう嫌だ」「一生治らなければどうしよう」「もう疲れた」などと毎日いっていた。(本人の手記より)
札幌医大付属病院の歯科口腔外科でも診てもらったが「噛み合わせも高さもほぼ合っている」といわれた。 (本人の手記より)
平成15年6月
この状態から抜け出すためには、「噛み合わせ治療が全ての原点」だと考え、ネットや書物、知人からの情報などで歯科を探した。
半信半疑で問い合わせたのが「東京かみ合わせ治療研究所」だった。
札幌から東京への通院ということで戸惑ったが、何かきっかけだけでもつかめればと思い決断した。
しかしこの頃にはすでに精神状態はボロボロで、「東京で治療してほんとうに治るのだろうか?」などの不安からパニッック症状を引き起こし、大好きだった飛行機に乗ることも恐怖で痙攣、ホテルの部屋など壁に囲まれる圧迫感・人ごみやTVの人物にまでも恐怖を感じるようになっていた。

症例

NMさんは奥さまに付き添われて来院されました。 落ち込みがかなりひどく、ひとりでは上京できない状況でした。 東京には1泊されて、2日にわたって治療させていただきました。 一通り検査の後、オーソシスを装着して帰っていただきました。

ここに当院で初診時に記入していただいている「健康調査票」を掲載させていただきます。



症例


つぎに全身の状態を知るために、その他の症状について初診のときに記入していただいた「健康調査票」を示します。


症例

上の表の○の中の数字は、症状の強さを表わしています。
(1)気になる程度
(2)辛い
(3)かなり辛い
という基準で患者さんに感覚的に記録していただいています。


1)歯の状態について
 ■歯がぬけたままになっている
 ■親知らずがある

2)顎関節の症状
 ■顎の間接が痛む(両方)
 ■口が開けにくい

気になる全身症状(1)
 ■肩がこる    (2)
 ■頭痛がある   (1)
 ■首筋が凝る   (3)
 ■顔面が痛む   (1)
 ■背中が痛む   (1)
 ■手足のしびれ  (3)
 ■目が疲れる   (1)
 ■めまいがする  (1)
 ■耳鳴りがする  (1)
 ■息が詰まる   (2)
 ■いびきをかく  (3)

気になる全身症状(2)
 ■不眠症である  (2)
 ■寝起きが悪い  (3)
 ■動悸がする   (3)
 ■息切れ     (2)
 ■集中できない  (3)
 ■イライラする  (3)
 ■疲れやすい   (3)
 ■便秘がある   (2)


これを見るとかなり多くの筋肉症状があることがわかります。 また自律神経に関する症状も多いようです。


症例

 ■一見してとくに異常は認められません。
 ■右上のブリッジと右下の冠は仮の歯が装着されていました。
症例

初診時のパノラマ写真

 ■特記すべき事項はみあたりません。
 ■インプラントが下顎の左右の臼歯部に、1本ずつ埋入されています。

顎運動追跡記録装置の所見(CMS) CMS(Computerized Mandibular Scan)
Scan13 とScan 2
症例

Scan13 の所見 顎の最大運動範囲、限界運動範囲 最大化機構量は、差しわたし50.0mm, 垂直41.2mmで十分な開口量を示しています。(開口制限はない) 前頭面では左右への偏移はみられません。
右への滑走運動が制限されています。
Scan 2  急速開閉運動、顎運動の円滑さを調べます
開口時と閉口時に相反性クリックが認められます。
最大開口速度は、開口時58.1mm/sec、閉口時45.8mm/secで十分な速度で開閉運動が出来る状態です。
Scan 3とScan8
症例

Scan 3とScan8の所見 Scan 3 の所見 TENS前の安静位と咬合位の比較
 ■とくに異常は認められません。
Scan 8 の所見 咀嚼運動
 ■ とくに異常は認められません。
症例

Scan9/10
筋の安静度の検査、Scan9;TENS前、Scan10 ; TENS後、前後の比較
 ■TENS前後ではほとんどの筋の電位が下がりました。
    これはTENS(径皮的末梢神経電気刺激)による筋のリラキゼーション効果がみられたことを示しています。
    LTA  4.2 → 1.1     LTP 10.0 → 5.6
    RTA 2.1 → 1.7      RTP 10.0 → 9.1
    LMA 4.4 → 4.0      LDA 10.0 → 5.9
    RMA 4.5 → 1.1      RDA 9.2 → 10.0
 ■このことからも、重い筋肉症状があることが示唆されます。

Scan 11 噛みしめ時の筋の機能電位
 ■とくに大きな問題はないが、右の咬筋の活動電位が低いようです。

筋のリラキゼーション後の安静位と咬合位の比較
Scan4/5
症例

TEMSを60分間使用して咀嚼筋のリラキゼーションを図ったのち、下顎安静位の位置を記録し、現在の咬合位と比較しました。
その結果;
 ■下顎安静位と咬合位の差は5.1mmであり、安静時空隙(フリーウエイスペース)は、6.1mmでありました。
 ■これは現在の咬合が、低位で後退咬合であることを示しています。
 ■また、左右的には0.6mm右に偏移していることもわかりました。

この結果から安静時の下顎位を記録し、上下の模型を咬合器にマウントしました。
症例

咬合器にマウントしたら、安静時(右の模型)では下顎が僅かに前進して臼歯部にスペースができることがわかりました。
これが今回の不快症状を起こす最大の原因であると考えて治療を進めることにしました。
初診の日の翌日、オーソシスを調製して装着しました。
症例

違和感が少ないように、左右に分かれた可徹式のオーソシスを装着しました。
帰りの飛行機の時間がせまっていたので、十分な調整ができませんでした。
症例

オーソシス試適時のCMSのデータ。前後的なずれは修正されているが、左右的には右に0.7mmずれています。
十分に調整されているとはいえませんでした。
筋肉は非常に敏感な組織なので、僅かなずれにも反応します。


症例

装着後2週後に再び来院された。
症例

やはり2日にわたって治療させていただき、2日目には確実に下顎安静位を捉えました。(6月19日)


症例

3度目の来院のときには取り外し式のオーソシスではなく、仮の歯と一体化して固定するタイプのオーソシスに変更した。オーソシス専用の硬い材料で制作しました。
多少高さのギャップはあるものの、[こんなに美味しく食事が出来たのは何年ぶりか」と至福の喜びを感じることができた。と喜んでくれました。


その時のCMSのデータ
症例

3度目の来院時の2日目には、オーソシスの下顎位が完全に安静位と一致している。(7月16日)


その時の感想とそれ以後の経過
症例

その後の経過
症例

データとその時のNMさんの訴えとを対比しています。
症状に問題があるときにはデータになんらかの問題があることが多いものです。
症例

症状も比較的安定してきたので、今までの仮歯をより本番の歯に近いハイブリッドの歯に作り変えました。
症例

本番の歯に近い、本番の一歩手前の修復物を、プロビジョナルといいますが、いわば本番の前のテストのような役割を果たします。
症例

プロビジョナルのデータがよく、症状も安定していれば、その状態でしばらく使ってもらいます。
プロビジョナルの他のデータも調べて問題がないか確認します。
症例

 ■左上の図は筋電図で筋の機能を調べています。初診時には右の咬筋がうまく機能していませんでしたが改善せれています。
 ■これはプロビジョナルがうまく機能していることを示しています。
 ■プロビジョナルの調整をたびたびおこなって、下顎が安静位にとどまっているかを確かめます。
 ■NMさんの場合は、下顎が後退していた時期がながかったので、なかなか新しいあごの位置に慣れることができませんでした。
 ■昔の筋肉記憶(エングラム)が強いのでどうしても元の位置に戻りたがります。
 ■人によっては1~2年、またはそれ以上、新しい顎の位置に定着するまでに時間がかかることがあるようです。
 ■この間に下顎を支えている組織が作り変えられて定着するものと思われます。この過程を「組織のリモデリング」といいます。
症例

 ■NMさんは1998年以来、6年間にわたって苦しめられた、噛み合わせの違和感と身体の不調から6年ぶりに
   解放されました。
 ■その正体はあごの位置異常に起因する筋肉の障害でした。
 ■術前のお顔と術後のお顔を見比べていただくとわかりますが、明らかに術前はお顔の筋肉が緊張しています。
 ■もちろん緊張しているのはお顔の筋肉だけでなく、全身の筋肉も緊張しているはずです。
 ■これでは通常の日常生活はもとより、お仕事にも大きく支障をきたすはずです。
 ■NMさんは一時お仕事の方にも身が入らなくなり、悩まれたそうです。しかし最近ではお仕事の方も順調で、
   意欲的に仕事に取り組んでおられるようです。

なおNMさんは、2008年に拙著「かみ合わせ症候群の診断と治療」を出版した際に、東京国際フォーラムで開催した出版記念講演会に出席してくださいました。
その際、ご自身の体験談を詳しく聴衆の皆様に話してくださいました。同じ苦しみを他のひとに味わってほしくないという思いからです。
その時のビデオがここで視聴できます。 ここに紹介させていただいた内容がより詳しくご本人の言葉で語られています。



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