顎関節症

2019年4月25日|カテゴリー「顎関節症
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顎関節症で悩んでおられる方は異常に多く、人口の5人に一人が罹患しているといわれています。

しかしながら顎関節症に対応して効果的に治療している医療機関は非常に少なく、いわゆる顎関節症難民といわれるひとびとが巷に溢れています。

その最大の原因は顎関節症の根本的な治療法が未だに確立されていないことにつきます。

正確にいううと顎関節症の原因と診断については画像診断技術の進歩により40年以上まえから確立していたのですが、それのもとづいた確実な治療方法の技術が確立して普及していないのです。


そのためにて再発しないように根本的に解決することのできる医療機関はほとんどなく、対症療法的な治療しかおこなわれていないということがいえます。

ここでは顎関節症をとりまく現状と効果的な治療法、そのような治療に取り組んでいる全国の数少ない医療機関をご紹介します。

1.顎関節症の治療はどこで?

現在顎関節症の治療はさまざまな医療機関で行われています。

それぞれの医療機関での顎関節症の治療の現状を私見をまじえて解説させていただきます。

1-1.一般開業歯科医院

顎関節症はおもに一般歯科、口腔外科、大学病院の口腔外科などで治療していますが、特に関心をもって熱心に取り組んでいるかどうかということになると大きな差があります。

一般の歯科の開業医のなかには顎関節症の治療に全く関心がなく、できればかかわりたくないと考えている歯科医は少なくありません。

その原因としては顎関節症の確実な治療法が確立していないために学校教育で十分な教育がなされていないなかったためではないかということができると思います。

そのために顎関節症の治療について確実に治せるという自信をもって積極的に取り組もうとする歯科医師はあまり多くはいないのです。

顎関節症の治療には社会保険診療が適用されているので、ほとんどの開業医は保険診療の制約の範囲内で治療をしています。

保険診療には一定の制約がありますので、その範囲内での治療には限界があります。

その範囲内での治療ではせいぜいが症状を改善させるまでの治療が限界です。

保険診療の制約の範囲内では再発しないようにするための根本的な治療までは望むことはできません。

そのことも顎関節症の治療について根本的に治すために積極的に取り組もうとする一般開業の歯科医師がはほとんどいないことの理由ではないかと思われます。

以上のような状況ですので顎関節症の治療に熱心な歯科医師を個人的にさがすことは困難だと思います。一番確実な方法としては、掛かりつけの歯科医院で顎関節症の治療に熱心に取り組んでいる医療機関を紹介してもらうことでしょう。

1-2.大学病院、基幹病院の口腔外科

一般的に顎関節症の治療は口腔外科(こうくうげか)が担当するということになっています。

歴史的に顎関節症の治療は観血的な外科手術が有効であると期待されていた時期があったために、口腔外科が担当するようになったという経緯があります。

もちろん今でも顎関節症の治療で外科手術による解決が必要な症例はありますが、それが万能であるという認識は歯科界にはありません。

顎関節症の治療を外科的に解決すると予後があまりよくないという認識が一般化しています。

症状がかなり進んで悪化した場合に変形性顎関節症といわれる状態になることがありますが、そのようなときには口腔外科の手術が有効なことがあります。

顎関節症は関節の中にあってクッションの役目をしている関節円板という部分がずれることでおこります。

関節円板がずれるとそれが口の開閉運動さまたげるようになるために口が開かなくなるのですが、(顎関節内障クローズドロック),口腔外科ではこれを手術ではなく徒手的に治療する方法がおこなわれています。

その方法は関節腔洗浄療法、パンピング・マニピュレーションとよばれている手法ですが、口が開かなくなった患者さんの口を比較的短時間で開かせることができます。

これはお口が開かなくなった時に用いられる優れた手法ですが、関節円板が転移した原因をとり除かなければもとに戻って再び口が開かなくなります。

残念ながらこれも対症療法の一種にすぎないということになります。

1-3.代替医療

整体、カイロプラクティス、鍼灸、整骨、接骨院 などがあるが、いずれも体の歪み,姿勢の
バランス、体の筋長緩和などを中心に施療しています。

一時的に症状が改善されることはありますが、永続的な効果は望みにくいということができます。

そのために対症的な効果に終わることが多いようです

2.顎関節症の原因と根本的な治療法

顎関節症を根本的に治すためには原因を知ってその原因を根本的に取り除かなければなりません。

原因を根本的に取り除くことが出来なければいずれ再発してしまうのは明らかです。

顎関節症の原因ははっきりとしているので、根本的に治療することはそれほど難しいことではありません。

2-1.顎関節症の原因

顎関節症はあごの関節が捻挫しているような状態であるということができます。

顎関節に強い外力が加わったために顎関節が捩れたような状態になり、そのために炎症をおこしているために痛くなったり、口が開かなくなったりします。

ちょうど膝の関節が足を捩じったり、急に大きな力が加わると炎症をおこして痛んだり歩けなくなったりするのと同じです。

顎の関節は急に暴力的な力が加わったり、継続的に力が加わり続けたりすると関節のなかにあるクッションの役目をしている関節円板という部品がずれてしまったり擦り減ったりして穴が開いたりすることがあります。

そうするとスムースに口を開けたり閉じたりすることが出なくなり、食事もしにくくなります。

膝の関節にも半月板というクッションのような役目をするものがあり、それがすり減ったりすると痛くて歩けなくなります。

あごの関節の障害にも膝の関節の障害にも共通していることがあります。それは一種の力による外傷であるということです。

膝の関節に加わる外傷の元となるものは体重ですが、顎の関節の場合に加わるちからは咬む力です。

咬むむ力は非常に強大でその力はその人の体重に匹敵する程の力が加わると言われています。

膝の場合も顎の関節の場合にも、普段はそのような強い力が及ばないようにする仕組みがあります。

膝の場合には膝の周りの筋肉が膝を保護して強い力が及ばないようにしていますが、筋力が衰えてくると膝関節に負担がかかるようになってきます。

そのために筋肉のかわりにサポーターなどをして膝を保護しなければならなくなります。

あごの関節の場合には、あごの関節を保護して過剰な力が及ばないようにしているのは奥歯に噛み合わせです。

しかし奥歯がすり減ったりして高さが低くなったりすると顎関節に過剰な力が加わるようになります。

下の図は奥歯が低くなったところを示しています。
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上の図の状態で奥歯を下の図のように咬み締めると、右の図のように関節円板
(図のピンクの部分)が押し出されてずれてしまいます
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その場合にはマウスピースなどで奥歯で咬んで高さを補うと一定の効果があります。

2-2.顎関節症の根本的な治療法

顎関節症の原因の原因については奥歯の高さが低くなることが原因であるということを説明してきましたが、それなら治療法は奥歯の高さを高くしてあげればよいわけです。

奥歯をの高さを高くする方法としては一番簡単なのは奥歯の高さを補うためのスプリント、またはマウスピースと呼ばれる装置を作って装着してもらう方法です。

そうすると奥歯が顎関節を圧迫する力が遮断されるために顎関節に害が及ばなくすることが出来ます。
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上の図はスプリントの一種であるオーソシスを下の歯の上に装着してもらっているところを示しています。右端の図のように奥歯の低いところの高さを補っているために顎関節が圧迫されることが防止できます。

この装置を装着することで顎関節症の症状は一時的に緩解させることができます。

しかしこの装置の使用をやめるとその途端に症状は再発します。

使用を中止しても再発しないように根本的に治療するためには、ご自分の元の歯の高さを高くする治療が必要になります。

その方法には二種類あり、ひとつは歯に被せ物などをして高くする方法と、矯正治療で歯を長く伸ばして高くする方法があります。

そのどちらを選択するかはその時の状況によって判断します。

3.顎関節症治療の期間と費用

3-1.顎関節症治療の期間

   不定愁訴を解消するまでの初期治療は通常、3~6カ月で終了します。

   そのあとの噛み合わせを治す段階の二次治療は、治療手段によって異なります。

   噛み合わせを補綴的な手段(被せ物)の場合は治療する歯の数などによっても異なります
   が、半年から1年位が必要です。

   歯を動かして上下の歯を不定愁訴が起こらないあごの位置で噛み合うようにする矯正治療
   の場合には2年から5年位が必要です。

3-2.顎関節症治療の費用

   費用の目安

    1.当院では、一回の治療に費やす時間、治療の難易度、医師の知識と経験、技術力にもと
     づいて費用を設定しています。

    2.噛み合わせ治療はかなり高度な治療なので残念ながら保険治療には対応していません。

    3.治療費については、治療を開始する前に概算をかならずお知らせします。
     十分に理解し納得されたうえで治療を受けてください。

   費用の区分と金額

      A. カウンセリング(30分~120分)             5000円+消費税

    B. 一次治療(オーソシスによる症状の改善を目指す治療)

      噛み合わせの検査、オーソシスの制作・装着、調整3回分を含む、治療期間は3~6カ月
                               240,000円+消費税

    C. プロビジョナル治療(一次治療から二次治療への移行治療)
                              1歯20,000円x本数+消費税

    D. 二次治療(症状が安定した後の咬合再構成治療)

     1)歯列矯正治療による咬合再構成治療(治療の難易度と期間による)

     2)補綴的手段による咬合再構成治療

4. 顎関節症治療に取り組んでいる全国の歯科医院

・顎関節症を根本的後戻りしないように治療されることを希望される方のために、ここね紹介
 させていただいた治療法と同じ方法を採用している医療機関をご紹介します。
 
・下記の学会のホームページにアクセスして学界の会員名簿からお近くの会員を探して連絡をして
 みてください。  国際顎頭蓋機能学会の日本部会 http://www.iccmo-jp/

・ここでご紹介した考え方に賛同して集まった歯科医師がお互いに情報を交換しながら研鑽して
 いる学会です。

・この学会は国内だけでなく海外の学会の下部組織なので国際的に情報の交換を行ってより良い
 治療法を追及しています。

まとめ

顎関節症を根本的かつ再発しないように治療するためには的確な診断と妥協のない治療が欠かせません。


2018年10月16日|カテゴリー「顎関節症

 

顎関節症の原因

あご(下顎)の位置の異常がもたらす健康障害の中で最も一般的で、苦しんでいる人が多い疾患に顎関節症があります。
顎関節症の原因は比較的単純で解決に結びつきやすい疾患ですので、あらかじめよく理解しておいていただきたいと思います。
顎関節症はあごの関節の捻挫が慢性化したような疾患です。ものを噛むときの強大な力によって顎関節が破壊される病気です。
人間がものを噛むときの力は、その人の体重に匹敵するといわれています。体重60キロの人は60キロの力でものを噛みます。通常、その力はものを噛むために使われ、顎関節には及ばないのが普通です。
普段は奥歯か噛み合ってその力を受け止めるように作られているために、顎関節にはその力が及ばないようになっています。
しかし、歯がその力を受け止める役目を果たしてくれない場合にはその力が顎関節に直接及んで関節が破壊されます。
顎関節はそのような強大な力に耐えられるような構造には作られていないからです。そのために簡単に破壊されてしまうのです。
顎関節症の原因
顎関節症の患者さんの場合、下顎を安静位に導いて調べると下の写真のように、奥歯が低いために噛み合っていません。
このようなことは筋肉も顎関節も安静状態になるように導いて下顎の位置を下顎安静に導いて記録する技術がなければ明らかにすることが出来ません。
この患者さんお場合、普段はこのような噛み合わせではなく上下の奥歯はきちんと噛み合っています。そのためいくらお口の中を覗いてみても奥歯の噛み合わせに異常があるということは知ることができません。
つまり顎関節症の原因を診断することは出来ないのです。
顎関節症の原因
上の写真のような噛み合わせは歯がかみ合っていないので、一見不自然に見えますがこれがこの患者さんのあごにとっては楽な位置なのです。この位置だと顎関節も周囲の筋肉も楽で、緊張のない状態になります。
ところが同じ患者さんが、食事などのために奥歯を無理に噛み合わせると、下の写真のように噛み合います。一見正常でよく噛み合っているように見えますが、この位置(咬合位)でものを噛んでいると、長いあいだには顎関節が痛み、頭痛などさまざまな筋肉症状も出てきて体調が不良になります。
顎関節症の原因
顎関節症の原因
下の図は下顎安静位でのあごの関節の状態を示しています。あごの関節は正常で関節円盤も正常な状態を示しています。
しかし歯の噛み合わせは、奥歯がすいていて噛み合っていません。
顎関節症の原因
この患者さんにとってはこの顎の位置が楽な位置(安静位)で、顎関節にも周囲の筋肉にも緊張や不快感を感じていません。
しかし下の図のように無理に奥歯を噛み合わせると、あごの関節が痛み周囲の筋肉も緊張して不快な症状が出てきます。
その理由は奥歯のスペースを閉じるように無理に噛み合わせることで、顎関節はそのスペースの分だけ矢印の方向に上に押し上げられてしまうからです。その結果、顎関節の内部でクッションの役目をしていた”関節円盤”という大切は”部品”が前方に押し出されます。(ところてん現象)
顎関節症の原因
そのために口が開きにくくなったり、開閉の度に音がしたり、硬いものを噛むと痛くて噛めなかったりするようになります。
顎関節症の原因
上の図はその状態を分かりやすく示した模式図で、右の図は実際のCT画像です。
関節円盤という組織が前方に移動していることが見ていただけると思います。これが顎関節症の実態で、顎の位置の異常が原因で起こっています。その位置異常は奥歯の噛み合わせが低いことが原因です。奥歯が噛む力を十分に支えてくれないために、顎関節に過剰で暴力的な力が加えられてしまいます。その結果顎関節内部の構造が破壊されてしまうのです。
下の図は正常な顎関節の構造です。左は口閉じている時、右は口を開いている時のものです。
顎関節症の原因
下の図は関節円盤の前方転移を起こしている顎関節の図です。
左の図は前方転移が起こった直後のもので、右の図は病態が進行して関節円盤が変性を起こしてしまった状態のものです。
顎関節症の原因
このように関節円板に過大な力が加わる状態を放置しておくと、やがて関節円盤の一部に穴があいてクッションの役目をしなくなり、骨と骨が直接接するようになります。
それと同時に骨の形そのものも変形してしまうこともあります。
そうならないためには顎の位置異常を改善して顎関節に過剰な力が及ばないようにしなければなりません。
それには正しい診断が不可欠です。この場合の診断とはあごの位置異常の有無とその程度を調べることです。
それにはいくら口の中を覗いてみても判断することはできません。
とくに上下の歯を噛み合わせた状態をいくら観察しても何もわかりません。噛み合わせを調べるために、咬合紙を用いて、上下の歯の接触状態を調べることがよくおこなわれていますが、この場合にはほとんど無意味で正しい診断にはまったく結び付きません。
原因は”歯の接触状態”とはほとんど関係がないところにあるからです。正しい診断のために最も大切なことは、下顎を安静に導いてその時の顎の位置(安静位)を記録することです。そこで初めて下顎安静位と咬合位との差を知ることができます。
ほとんどの医療機関で顎関節症を正しく診断して治療することができないのは、このような考え方と技術に対する理解がないからです。
まとめ
顎関節症を確実に治療するためにはその原因を的確に把握してその原因を取り除くことです。
その原因を把握するためには下あごを下顎安静位に導かないと見えてきません。
そのためには下顎を安静位に導く方法とその位置を正確に把握してそこに下あごを的確に誘導するための装置を正確に作らなければなりません。
このようなアプローチを採用している施設は首都圏でもきわめて限られているために、顎関節症で苦しんでいる患者さんはなくなるこことがありません。