顎関節症

2019年5月1日|カテゴリー「顎関節症
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せっかく歯並びが奇麗になったのに、噛み合わせの不調という後遺症に悩む患者さんが増え続けています。

矯正治療後に、以前のようにものが十分に咀嚼できない、四六時中噛み合わせの違和感になやまされる、仕事や勉強に身が入らない、顎関節の異常、首・肩のこり、頭痛などを経験するようになります。

これらの不定愁訴に悩まされている一人の患者さんの治療経過にそってその症状と原因、解決法について解説させていただきます。

1.患者さんとの出会い

矯正治療の不具合で悩んでおられる患者さんとの最初の出会いは次のような一通のメールからでした。

ご相談内容:

矯正治療が原因という方の体験談を読みましてこちらに連絡させていただいています。
私は歯並びは治療のおかげでよくなったと思うのですが、噛み合わせが上手くいっているとは思いません。
奥歯を噛みしめる、ぐっと力をいれる感覚がありません。前歯がいつも当たっている感覚で噛む時も昔から前歯ばかり使っていたせいか、奥歯を使っていない気がします。
毎日口の中に違和感がありイライラしています。またしゃべりにくいです。
歯医者にいっても歯並びは大丈夫だと言われるのであきらめていたのですが、そんな時に偶然このサイトを見つけたのですぐに連絡をいたしました。カウンセリングをどうかよろしくお願い申し上げます。

2.患者さんのお悩み

早速来院していただき、カウンセリングをさせていただきました。

 この方は、2年ほど前に八重歯が気になり矯正治療を始めましたが、

 治療後に、奥歯が低くてかみ合わなくなり、しっかり噛める感覚がない。

   どこで噛んでよいか分からない

   前歯が常に当たっており、奥歯でかみ締めることができない。

   奥歯で無理に咬むと首筋が痛くなり、ひどいときは頭痛もする。

   夜もよく眠れないことが多く、そのために寝起きが悪い。

 疲れやすく、日中はやる気がおこらない。

 毎日くちの中に違和感がありイライラする。

 今は集中して本を読むこともできない。

 顔の筋肉が強張り、緊張していて痛くなるときもある。

 就職活動も十分に身が入らない。

このような症状を治療をしてもらった矯正医に訴えても、納得のいく説明が得られることはまずありませんでした。

その理由は治療をした矯正医自身も、患者さんがなぜこのように多くの不定愁訴を訴えてくるのか理解できないからです。

患者さんの求め通りに歯並びを綺麗に整えたのに、患者さんがこのように厄介な症状をたくさん訴えてくる理由が理解できません。

矯正治療とは関係がないと思いたいところですが、矯正治療をする前には無かった症状ばかりですからそういうわけにもいきません。 

明らかに矯正治療の結果もたらされた後遺症であり、何らかの因果関係があるはずです。

矯正治療をした後で、いわば矯正治療の後遺症としてこのような心身の不調を訴えてくる患者さんは増える傾向にあり、この方ばかりではありません。

当咬み合わせ治療研究所を訪れる患者さんの3人に一人は、過去に矯正治療を受けた経験があり、その後遺症に悩んでおられます。

そのような患者さんの多くは原因不明ということで適切な説明も処置も受けることができないために、有効な情報を求めて当研究所に来所されます。

もし一生治らずに、このような苦しみから逃れることができなかったらどうしようかという不安から絶望的になっておられる患者さんは少なくありません。

そのために仕事や勉学に身が入らず、人生のキャリアが次第に狂っていってしまう若者も少なくないのです。引きこもりやフリーターなどが出現する原因の一つにもなっています。

このような患者さんは当然、複数の医療機関を受診されます。しかしさまざまな検査の結果、異常はないと診断されることが多く、そこではじめて自分が感じている悩みや苦しみは誰からも理解してもらえないものであって、孤立無援であるということを知ります。その結果、孤立感と不安感を抱くようになります。

そうなると次第に周囲からも理解されなくなり、さらに孤立していきます。孤独感と不安感がつのると、その結果、精神に異常をきたすようになることもあります。

結果的に精神科や診療内科を受診することになりますが、多くの場合そこで薬物療法が施されます。薬物が処方されますが、これは基本的に対症療法でしかなく、多少改善することがあっても完治することはまず期待できません。

それでは完治させるためにはどうすればよいのでしょうか。

そのためには矯正治療の結果、何がどのように変化したためにこのような異常がもたらされたのかを正確に診断して把握しなければなりません。

診断の結果、その原因が分かれば原因を取り除くための治療をおこなうことになります。

ただしこの診断と治療のためには、従来の歯科治療で用いられてきた手法だけでは十分ではありません。それとは別の考え方と取り組み方が必要になります。

3.患者さんの悩みを解決するためにには従来とは違う​​考え方と取り組みかた

その考え方とは、当、咬み合わせ治療研究所が採用しているニューロマスキュラー理論というものですが、採用している医療機関は極めて限られています。

この理論がなければ、このような患者さんの悩みを理解して解決することはできません。

このようなことがなぜ起こるのかというという原因も理解できないので対策の立てようもありません。

しかし残念なことにこの理論を採用している医療機関は皆無に近いので同じような事故がくりかえし頻発するようになります。

この理論を応用すれば、矯正治療によって狂わされた咬み合わせの異常を的確に診断して、確実に対策をたてることができるようになります。

つまり不定愁訴の原因を診断して、原因を取り除くために必要な治療を行うことができるようになるのです。

またこのようなことが起こらないように注意して治療をすることも出来るようになります。

当かみ合わせ治療研究所ではこの理論のおかげで、咬み合わせの異常に関連した不定愁訴で苦しんでおられる患者さまの苦しみを解消することが可能になっています。

4.矯正治療後にこの患者さんには何が起きているか

この患者さんは治療後に次のような噛み合わせの違和感を感じたと訴えておられます。

 治療後に、奥歯が低くてかみ合わなくなり、しっかり咬める感覚がない。

   どこで噛んでよいか分からない

   前歯が常に当たっており、奥歯でかみ締めることができない。

   奥歯で無理に咬むと首筋が痛くなり、ひどいときは頭痛もする。

これらの訴えからも分かるように奥歯の噛み合わせが低いままで治療が終わったようです。

しかしそのことを自覚できるのは患者さんだけで、おそらく治療をした歯科医には理解してもらえなえなかったと思います。

なぜ患者さんが自覚できることが歯科医には理解できないのでしょう。

この疑問は前述のニューロマスキュラー理論で解くことができます。

ニューロマスキュラー理論は神経と筋肉の働きを重視するという考え方ですが、それによると上下の歯が同時に緊密に噛み合う時の下あごの位置は下あごを動かしている筋肉が緊張しないで安静を保てる楽な位置でなけらばならないということです。

この患者さんの場合には患者さんにとって楽で自然な下あごの位置で自然に口を閉じた時に全部の歯が噛み合わないで前歯だけが当たります。

同時に奥歯も噛み合わせようとすると下あごを後ろのずらして奥歯が噛み合う位置までずらして噛まなければならないので、筋肉にはそれだけ無理が加わり首筋が痛くなったり酷い時には頭痛もするようになります。

これは噛むための筋肉が安静を保てる下あごの位置で全ての歯が噛めるように上下の歯が並んでいないためです。

下あごを引っ込めなければ上下の歯が噛めないような噛み合わせの状態でものを咬む度に噛む筋肉に負担をかけるようになりそれは不定愁訴の原因になります。

自然に下あごを閉じたときに全部の歯が同時に噛み合うような噛み合わせが理想です。

そのためには下あごの自然な位置(下顎安静位)を知らなければなりません。

下顎安静位が分かれば噛み合わせが正しい下あごの位置で行われているかどうかが分かります。

そうすれば不定愁訴がなぜ起きたのかを知ることが出来ます。

不定愁訴が起こらなくするための治療をおこなうことができるようにもなります。

このように下あごが楽で自然な位置である下顎安静位は噛み合わせ治療を行う上で診断と治療の基準になります。

5.矯正治療後に起こった不快事項の原因を調べる

それでは矯正治療後の不定愁訴で悩んでいたこの患者さんの場合に後遺症として不定愁訴がなぜおこるのかを調べることにしました。

矯正治療の結果作られた噛み合わせの位置が下顎安静位の範囲に入っているかどうかを測定してみなければなりません。

下顎安静位を正確に測定するためにはそのために造られた特別な装置と設備が必要です。

診断と治療のために必要な設備は次の3つの装置です。

 1.下顎の位置の計測と運動を調べる装置 CMS ※
 2.下顎の周辺の筋肉の緊張の度合いと筋肉の健康状態を調べる筋電計EMG ※
 3.筋肉の緊張を和らげて下顎を安静位に導く装置 TENS ※

   ※ CMS(Computer aided Mandibular Scan)という装置です。 
    この装置は下顎の先端にセンサーをつけて下顎の運動を測定する装置(K7)と
   ※ EMG 筋肉の緊張や機能を測定する筋電計から構成されています。

   ※ TENS は筋肉の緊張を緩和するために用いる低周波発信装置。
    経皮的末梢神経電気刺激(けいひてきまっしょうしんけいでんきしげき、
    TENS(transcutaneous electrical nerve stimulation)は、痛みの局所、周辺、
    あるいは支配脊髄神経起始部などに表面電極を置き、低周波を通電する電気療法の一種。
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上の図は矯正治療によって作られた今の噛む位置と下顎安静位の位置関係を示しています。

顎の力を抜いて楽にした時の下あごの位置は矯正治療でつくられた下あごの位置よりも3.6ミリ下の方(わずかに開口)にあり、水平的には3.5ミリ前方になります。

このことから現在噛むように作られている位置は下顎安静位より後方であることが分かりましたので、顎が楽なところで噛むようにするためには下あごをを少し前にずらして噛まなければなりません。

そこで楽なところで噛むことが出来るようにするために赤い数字の3のところで噛むことが出来るように下あごの位置を誘導することにしました。

そのためには取り外し式のマウスピースの一種であるオーソシスという装置をつくって使ってもらうことにしました。

下の写真が患者さんに使っていただいたそのオーソシスを示しています。
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6.下後を安静位に誘導するオーソシスの効果

オーソシス装着後の患者さんの感想です

あれから少し着けていたのですが、違和感があり最初は着けていられなかった。

最近説明書を読んでいたら、歯を噛み締めないようにと記載されていたのを思い出し、オーソシスを着けながら歯を噛み締めないように努力したら嘘のように続けられるようになった。

今は何日も続いている。着けていると気持ちが落ち着くようになった。気が付くと気持ちが前向きになっている。逆に着けていないと思考が鈍くなる感じ。授業が受けられない。

外していると世界が不快に感じる。努力してもつまらない。診療内科の薬を飲んでも変化はないがオーソシスを着けた方が気分が軽くなる。

矯正治療の途中からそのような不快感はあったが気に留めていなかった。

矯正治療が全て終わってしばらくしてから筋肉がリラックスできないことに気が付いた。それから歯がおかしいと確信して沢山の病院で診てもらった。息が苦しいとき耳鼻科にもいったが診療内科を紹介された。

就職の面接にもオーソシスを着けていったがパニックにならなかった。鎮静剤として働いているようだ。家族と話していても感情的にならないですむ。

オーソシスを着けずに噛み合わせた時に前の状態に戻るのがすごく気持ち悪い。

オーソシスを着けていると顔の筋肉に変な力がはいらないから授業に集中できる。勉強できるのがすごくうれしい。
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44か月後に患者さんは笑顔をとりもどしてくださいました。

まとめ

患者さんのお悩みにはほぼ完全に対応できたと思いますが、それはニューロマスキュラー理論とそれに関連した設備と治療技法のおかげです。

従来の治療技法では診断も治療もおこなうことはできなかったはずです。

ニューロマスキュラー理論は下あごが楽な位置(下顎安静位)中心に診断と治療をします。

噛み合わせにかかわる治療は矯正治療だけでなく全ての治療で下顎安静を基準に治療をしなければなりません。

そうすればこの患者さんのような無用な不定愁訴で苦しむ必要はなかったのです。

それには下顎安静位を求めて治療に応用する知識と技術が必要です。

それは決して難しい技術ではありません。ここで概要を説明させていただいた通りです。

理論を勉強してある程度の設備をととのえればだれでも歯科医なら実行できる技術です。

この患者さんのように矯正治療後の後遺症で悩んでおられる方は後を絶たないのにもかかわらず、このような治療に取り込む臨床家は殆ど増えていません。

経済的にもリスクの多いこのような分野にはわざわざリスクを承知のうえで理論を勉強したうえで設備投資してまで参入しようとする臨床家はなかなか現れません。

全国の多くの悩み苦しんでいる患者さんのためにまことに残念なことだと思います。
2019年4月30日|カテゴリー「顎関節症
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【顎関節症の症状】症状・原因・治療法

あなたは顎関節症がなかなか治らないので悩まれていませんか?

そのような悩みを抱えている方はたくさんいらしゃいます。

顎関節症がなかなかな治らない理由は簡単です。

顎関節症の原因をきちんと理解して適切な治療が行なわれていないからです。

顎関節症の原因は非常に単純で以前から広く知られています。

しかしその原因を取り除くための効果的な治療法は一部の臨床家の間でしか行われていません。

原因をきちんと理解して適切な治療を行えば顎関節症を根本的に治すのはそれほど難しくはありません。

ここではなかなか治らない顎関節症で悩んでおられるあなたのために,顎関節症を根本的に治す方法をお教えしましょう。

顎関節症治療の専門医である安部井寿彦が分かりやすく解説させていただきます。

1.顎関節症の症状とは?

まず顎関節症とはどんな病気であるかということから確認していきましょう。

それには顎関節症の症状にはどんなものがあるかを知ることが大切です。

あなたが今苦しんでいらっしゃる症状について理解を深めるために重要だだからです。

顎関節症の症状には次のようなものがあります。
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まず次のような症候はありませんか?

 1.口を開けたり閉めたりするたびに音がする

 2.あごの辺りが痛む

 3.固いものを咬むとが痛くて噛めない

 4.口が大きく開けない

 5.口が曲がって開く

あなたにはどの症状が当てはまりますか?

顎関節症にはもう一つの重要な特徴があります。

それは顎関節症は顎関節だけでなくその他の部位の症状もともなって現れるということです。

例えば顎関節症を患っている人は同時に肩こりや首筋の痛み、頭痛、顔面のこわばり、目の奥のいたみ、場合によっては不眠や倦怠感、イライラや意欲の低下などなどさまざまな原因不明の不快な症状が随伴症状としてあらわれることがあります。

これらの症状は顎関節症と共通する原因から発しているため、顎関節症が解決すると同時に解消することがあります。

2.顎関節症で苦しんでいる人々

顎関節症で苦しんでいる人はもちろんあなただけではありません。

以前Yahooの知恵袋で悩み相談の回答者をしていた時にそこに寄せられた顎関節症で苦しんでおられた方への回答をしたことがありますが、そのうちのいくつかを紹介させていただきなます。

悩みを訴えてこられた方の切実な苦しみを知ることで、深い共感を得ていただけると思います。

相談1.私は顎関節症になってからとても頭が痛く働ける自信が
            なくなり,ずっと家で休んでいます。
2017/7/817:26:01

私は顎関節症になってからとても頭が痛く働ける自信がなくなりずっと家で休んでいます。ですが誰とも関わらずこのままではいけないと思い転職活動を始め、内定をもらった会社があるのですが、やっぱり調子が悪く行ける自信がありません。歳は今年26でとても焦ってしまいます。結婚相手も見つからないし、働くしかないのかと思うのですが、無理してでも働くべきでしょうか。無理しすぎて体が悲鳴をあげそうな感じです。どうしたらいいでしょうか。

回答

ベストアンサーに選ばれた筆者の回答

yc_toshiabeiさん

2017/7/1020:46:48

噛み合わせの異常と顎関節症や頭痛などとの関係についてとくに興味をもって長年治療をしてきた歯科医師です。

あなたのように頭痛と顎関節症を同時に患う患者さんは珍しくありません。これまでにも大勢診てきました。

顎関節症の原因と頭痛の原因には共通点があるために両方同時に患う患者が少なくないのです。

その共通の原因は一口でいうと筋肉の緊張です。あなたが苦しんでおられる頭痛は多分筋肉の緊張からきているものだと思われます。

頭痛の中で最も多く見られる頭痛に緊張性の頭痛といわれるものがあります。

あまり激しくズキズキするような痛みではなく、どちらかというと重苦しい、締め付けられるような鈍痛です。肩こりや首筋の凝りなども同時に現れます。

もしそうだとすれば筋肉の緊張をほぐしてやると緩解します。一番簡単なのは首から上の血流をよくするための首の運動です。首をグルグル回すような運動をしてみてください。

もちろんこれだけですべて良くなるわけではありませんが、少なくとも軽くなるはずです。

もっと根本的に治すためには筋肉を緊張させている原因を取り除かなくてはなりません。

その原因とは、すぐには信じてもらえないかもしれませんが下あごの位置の異常です。

下顎には多数の筋肉が付着していて、上方では頭(頭蓋)と繋がって下顎を吊り下げるような筋肉があり、下方には頸部や肩と繋がっていて下から顎を支えているような筋肉などが多数あります。

その中心にある下あごの位置が歯のかみあわせの異常によってわずかでもずらされると、付着している多くの筋肉のバランスが崩されて緊張しはじめます。

ちょうど操り人形を操っている多数の糸のうちのどれかの長さが狂うと人形の動きが不自然になるようなイメージです。

筋肉は非常に鋭敏な組織なのでわずかな異常にもすぐに反応して緊張します。もちろん精神的な緊張にも反応します。

それらの筋肉の緊張はすぐ近くの筋肉、たとえば首筋や顔の筋肉、頭の周辺のこめかみや側頭部、前頭部、後頭部などの筋肉にすぐに伝わります。頭が締め付けられるような不快感や顔の筋肉が強張るような不快感として感じられるようになることもあります。

それだけではなく、あごの位置の異常は顎関節の構造的な変化をもたらして顎関節症の正常な動きが出来なくなる原因となります。

さらにこれらの筋肉の緊張は自律神経の異常による睡眠障害、全身の倦怠感、気分障害なども引き起こし、やる気のなさ、集中力の低下などまともな人間としての活動する能力を奪い、就業することなどできなくなる可能性は否定できません。

26歳のあなたが焦っておられるのは当然のことですので、何とかしてあげたい気持ちでいっぱいです。

これらの症状は総合して側頭下顎機能不全TMD(ティー・エム・ディ)とよばれていますが、この名称は我が国ではあまり一般的に知られていません。

これらの症状(症候群)は下顎の位置の異常を正常化することでほとんどの場合改善します。
治療法はありますので、希望を失わずに頑張ってください。

相談2.顎関節症で悩んでいます。

1週間前の朝起きると顎があけにくくなり、むりやり開けようとするとすごい音のクリック音あがなりました。痛みもあります。
2日たって音は小さくなりましたが、食事をしてしばらく食べ物を噛んでいると、ガリッという音がして顎が開けにくくなったり(しばらく開け閉めするとだんだん治ってくる)、夜寝るときに仰向けや右向きで寝るとまた顎が開けにくくなったりしています。

先週から2回ほど歯医者に通ってマウスピースをもらい、昨日から寝るときのみつけています。

今日半日過ごしてみて、マウスピースをつけたまま仰向けで寝て、顎が開けにくくなることはなかったのですが、食事する時になんとなくまた顎が開けにくくなりそうな感じはまだのこっています。

このままマウスピースをつける治療をしていて治るのか心配です。特に安心してご飯が食べられないのがかなり苦しいです。

ちなみに歯科医師の先生には、寝る時に仰向け、右向きで寝ると翌朝顎が開けにくくなること、食事の時にしばらくすると顎が開けにくくなることは伝えました。
顎関節症の治療を長年おこなってきている歯科医師です。

大変分かりやすく症状を説明していただいたお陰で状況をほぼ正確に把握することができました。

食事をしたり夜仰向けで寝たりすると、ガリッという音がして顎が開けにくくなったりするということですが、これは顎関節の状態を正確に表しています。

これらの症状は下あご(下顎)が後ろ(奥歯の方向)に後退するために起こります。

ためしに下顎を前(前歯の方向)に出しながら口を開けてみてください。音もなく楽に大きく口を開けることが出来るはずです。

仰向けに寝ると自然に下顎が後ろに後退します。そうすると下顎頭(顆頭)という部分が後ろに下がって関節円板というものを圧迫して前方に移動させてしまいます。そうするとそのために口が開けにくくなったり音がするようになります。

この関係はわたしの知恵ノートに図解入りで説明していますので参考にしてください。

歯医者に通ってマウスピースを作ってもらったそうですが、とてもよいことです。マウスピースは適切に作られると下顎の後退を防いでくれるので症状が悪化するのが避けられます。

しかしマウスピースはあくまでも症状を緩和して悪化するのを防いでくれるだけで、それで顎関節症が治る訳ではありません。

一時的な突っかい棒(スプリント)の役目をはたしているだけですのでそれをはずすと再発します。

根本的な原因は奥歯の高さが低いことにあるからです。その問題を解決しない限り、マウスピースを一生使い続けなければなりません。

” 食事する時になんとなくまた顎が開けにくくなりそうな感じはまだのこっています。”ということはそのとおりです。奥歯が低い状態で食事をしていると下顎が後退した状態で顎関節が圧迫され続けるので症状は悪化します。

”このままマウスピースをつける治療をしていて治るのか心配です。” とのことですが、この点については治療をしてくれている歯科医にぜひ相談してみてください。

歯科界では顎関節症の治療法について定まった考え方がなく混乱しています。そのため今わたしがここで解説したような考え方がすべての歯科医師の共通認識になっているわけではありません。

最後に一つだけ大切なアドバイスをさせてください。口が開けにくくなった時には無理に口を開けようとすることは避けてください。顎を前に出しながら開くようにしてください。顎関節を傷つけないようにすることが出来ます。お大事に。
相談3.顎関節症について。
23歳の女性です。
数日前から左顎の痛みに悩んでいます。
中学、高校の頃から口を開くときに左の顎のカクッという音が気になりだして、痛みはなかったのですが口腔外科に受診したところ、顎関節症ではないか、ということで赤外線のような温かい光を当てて数回治療しましたが音はなくならず放置していました。
それで最近突然音が鳴っていた方の左顎が痛み始めました。
思い当たることは、大きな飴玉を食べたことと、国家試験を控えた受験生のためずっと座って勉強していて肩凝りがとてもひどいことがあります。
こんなにずっと痛いのは初めてなのでとても怖いです。元々偏頭痛がありますが、顎が痛くなってから毎日頭痛もします。
何か改善策を知っている方がいましたら教えてください!

回答(筆者の投稿)

顎関節症に興味をもって治療をしている歯科医師です。

顎関節症が再発して前よりもひどい症状がでてきたために、恐怖と不安にかられておられるようですがお察しします。

中高校生のときは発育途上であったということもあり、温熱療法でとりあえず急性炎症をおさめる治療法が選択されたのだと思います。

しかしそれだけでは炎症がおさまっても慢性の状態に移行しただけですので、根本的に問題は解決されていなかったのだと思われます。クリッキングが消えなかったことがその証拠です。

問題が解決されていなかったということは顎関節の内部で解剖学的な構造の変化がそのまま継続していたということです。

構造の変化とは顎関節のなかでクッションの役目を果たしている関節円板という部品の位置がずれてしまっているということですが、大きな飴玉をほおばって噛んだ際にその位置がさらにずらされてしまい関節円板が傷ついて炎症をおこし、痛むようになったのだと解釈されます。

急性の炎症がおさまればいずれ痛みは軽くなっていくはずですが、口が大きく開けないという開口障害はしばらく続くことになります。

根本的な治療法は転移した関節円板を元の位置に復位させることですが、これはなかなかうまくいきません。そのために顎関節症は完治しにくい疾患であるということになっています。

関節円板の完全な復位は無理だとしても症状をそれ以上悪化させないための応急処置があります。

それは顎関節にそれ以上圧力を加えないようにして安静に保つために必要な処置ですが、ガーゼか脱脂綿、ティッシュペーパーなどを親指くらいの大きさに丸めて両方の奥歯の上におき、軽くかんでおくという方法です。できれば下あごを少し前に出した状態で絶対に強く噛み締まないようにします。

これを食事が終わったあととか就寝中に行うようにすると、関節の痛みとか開口障害が和らいでいくはずです。

もしこの応急処置の効果が表れるようであれば、かかりつけの歯科医院でそのことを告げてマウスピースを作ってもらってください。効果的なマウスピースを作ってもらえるはずです。

顎が痛くなってから毎日頭痛もするとのことですが、顎関節症と頭痛はよく併発します。

顎関節の内部に異常があると周辺の筋肉が緊張します。そのために肩こりや緊張型の頭痛がおこります。

また逆に肩こりや首筋の筋肉が凝る(緊張する)と顎関節症も循環障害のために悪化します。そのため首や肩の筋肉を揉み解すような運動をして血液循環を良くするようにしてください。すべての関連する部位の状態が改善するはずです。

一番よくないのは同じ姿勢を長時間、精神的に緊張した状態で続けることです。リラックスした状態でからだを楽にして適当に動かしてみてください。

なおマウスピースで顎関節症が改善したとしてもそれはあくまでも一時的な対症療法に過ぎないということを忘れないでください。

顎関節症の直接の原因は奥歯が低くなって下顎が後ろに下がる(後退)するためですから、最終的には奥歯の噛み合わせを高くして下顎が後退しないようにする治療が必要です。

以上ですが、これで少しでも楽になっていただければ幸いです。お大事にしてください。



以上の悩み相談に寄せられた内容をご覧になっていかがでしたか?

これは顎関節症で悩んでおられる方のほんの一部にすぎません。

これらの相談で共通するところは、いずれの相談者も顎関節症が解決されずに答えを求めて彷徨っておられることです。

3.顎関節症の原因

顎関節症の原因は比較的単純で解決に結びつきやすい疾患ですので、あらかじめその原因などをよく理解しておいていただけたらと思います。

顎関節症はあごの関節が捻挫してそれが慢性化したような疾患です。

ものを噛むときの強大な力によって関節が破壊されたような病気です。人間がものを噛むときの力は、その人の体重に匹敵するといわれています。体重60キロの人は60キロの力でものを噛みます。

通常はその力はものを噛むためだけに使われて顎関節には及ばないようにできているのですが、そはどめが効かなくなったために起こった病気です。

そのはどめの役目を果たしているのは文字どうり奥歯の噛み合わせです。

奥歯の噛み合わせの高さが低くなると奥歯に掛る力が直接顎関節に向かうために顎関節が破壊されるのです。奥歯が関節を保護する役目を果たしていないために強い力にさらされた結果関節内の構造が変化して捻挫したような状態になるのです。

下の図はその状態を示しています。
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上の左の図は顎関節が正常な状態を示していますが、右のCTの図は関節円盤が前方に転移(脱離)した状態を示しています。関節円板は左の図の黄色い部分ですがクッションの役目をしています。
奥歯が関節を保護する役目を果たしていないと、関節頭(橙色の部分)が右のCTの画像のように後上方に際限なく移動して関節円盤を押しのけて前方に転移させてしまいます。

これが顎関節症の人の顎関節の中でおこっている構造の変化ですが、このような構造の変化が起こると、関節円盤が関節頭の動きを制限するようになり口が開けにくくなったり、運動の途中で引っかかたりするためにクリック音が鳴ったりするようになります。

このように関節頭が関節円盤を圧迫して転移させてしまう原因は奥歯の噛み合わせが低い(短い)ために下あごが後ろに後退しているためです。

奥歯ぼ噛み合わせが低いと下あごは自然に後ろに後退します。

そうすると関節頭はなおさら後上方に移動しますから関節円板を圧迫しやすくなります。

しかし奥歯が低いかどうかとか、下あごが後ろに後退しているかどうかということはいくら口の中を観察しても分かりません。

筋肉も顎関節も安静な状態に導いて観察したときにはじめて知ることが出来ます。

歯が噛み合っているいるところをいくら観察してしても分からないのです。

そのことが顎関節症の診断を難しくして治りにくい病気にしている原因です。

原因は分かっていても診断が簡単ではないために感嘆医治療ができないのです。

顎関節症の患者さんにあごの力を抜いてもらってその時の上下の歯の関係を記録すると、次の写真のように上下の歯は噛み合わずに浮いています。奥歯が噛み合わずに短いように見えます。
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一見不自然に見えますがこれが、これがこの患者さんにとっては楽なあごの位置なのです(下顎安静位)。この位置だと顎関節も周囲の筋肉も楽で、緊張のない状態になります。
ところが同じ患者さんが、食事などのために奥歯を噛み合わせると、次の写真のように噛み合います。一見正常でよく噛み合っているように見えますが、この位置(咬合位)でものを噛むと、関節頭(前の図の橙色の部分)が上に挙がり関節円板を圧迫しして転移させます。

また上下のあごの間を結んでいる筋肉の安静な関係が損なわれるために緊張します。長いあいだには顎関節が痛み、頭痛などさまざまな筋肉症状も出てきて体調が不良になります。
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次の図は下顎安静位でのあごの学関節の状態を示しています。あごの関節は正常で関節円盤も正常な位置にあります。しかし歯の噛み合わせは、奥歯がすいていて噛み合っていません。
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この患者さんにとってはこの顎の位置が楽な位置(安静位)で、顎関節にも周囲の筋肉にも緊張や不快感を感じさせていません。
しかし下の図のように無理に奥歯を噛み合わせると、あごの関節が圧迫されて痛み周囲の筋肉も安静が乱されて緊張して不快感が症状として出てきます。

その理由は奥歯のスペースを閉じて無理に噛み合わせることで、顎関節はそのスペースの分だけ矢印の方向に上に押し上げられて関節を圧迫するからです。その結果、顎関節の内部でクッションの役目をしていた"関節円板"という大切は"部品"が前方にところてんのろうに押し出されます。
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そのために口が開きにくくなったり、開閉の度に音がしたり、硬いものが痛くて噛めなくなったりします。

これが顎関節症の実態で、顎の位置の異常が原因で起こっているということが分かっていただけたと思います。その位置異常は奥歯の噛み合わせが低いことが原因です。奥歯が噛む力を十分に支えて顎関節を保護してくれないために、顎関節に過剰で暴力的な力が加えられてしまうからです。

下の図は関節円盤の前方転移を起こしている顎関節の解剖的な図です。
左の図は前方転移が起こった直後のもので、右の図は病態がさらに進行して関節円盤が変性を起こしてしまった状態のものです。
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このような状態を放置しておくと、やがて関節円盤の一部に穴があいてクッションの役目をしなくなり、骨と骨が直接接するようになります。それと同時に骨の形そのものも変形してしまうこともあります。このような状態まで進行したものは変形性顎関節症と呼ばれています。

そうならないためには顎の位置異常を改善して顎関節に過剰な力が及ばないようにしなければなりません。

それには正しい診断が不可欠です。この場合の診断とはあごの位置異常の有無とその程度を調べることです。それにはいくら口の中を覗いてみても判断することはできません。とくに上下の歯を噛み合わせた状態をいくら観察しても何もわかりません。

噛み合わせを調べるために、咬合紙を用いて、上下の歯の接触状態を調べることがよくおこなわれていますが、この場合にはほとんど無意味で正しい診断にはまったく結び付きません。原因は"歯の接触状態"とはほとんど関係がないところにあるからです。

正しい診断のために最も大切なことは、下顎を安静位に導いてその時の顎の位置(安静位)を記録することです。そこで初めて下顎安静位と咬合位との差を知ることができます。

下顎安静位が分かれば治療はその位置で下顎を支える装置をつくって装着し、顎関節を保護して安静が保てるようにすることです。

ほとんどの医療機関で顎関節症を正しく診断して治療することができないのは、下顎安静位を調べて記録する技術をおろそかにしているためです。

4.確実な顎関節症の治療法

正しい診断は下顎の位置を生理的な下顎安静位に導くことで達成されます。

そのためには下顎を支えている筋肉の緊張をとって安静にします。

確実に筋肉の緊張をとって安静に導くためにはTENSという低周波治療器を使います。

そうすることによって筋肉の深いところから筋のリラクゼーションを行なうことが出来ます。

さらに下あごの正確な位置を求めて記録するためには顎運動計測記録装置を使います。

このようにして真の下顎安静位を求めることができれば治療はより確実なものになります。
顎関節症治療の目的は顎関節が痛くなく正常な機能をが営めるようにすることです。

そのためには顎関節に無理な力が及ばない下あごの位置で顎関節が正常に機能できるようにすることです。

その方法は顎関節にむりな力が及ばない下顎安静位で下あごを支えるよにすることです。

具体的には下顎安静位でその下あごの位置を支えるためのマウスピースを作って装着してもらうだけで顎関節を安静に保つことが出来て症状はなくなります。

下の写真はその装置(オーソシス)を示しています。この場合はオーソシスを下の歯の上に装着しているところを示しています。
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オーソシスを装着することで奥歯の短いところが補われて下顎が安静位に導かれます。
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さらに下あごが安静位に導かれることで下あごの周辺の筋肉の緊張がとれて、首筋や肩の筋肉、頭の周辺の筋肉の緊張もとれて肩こりや頭痛なども改善されます。

問題はそのあとです。オーソシスを使っている間はこの状態が続きますがオーソシスを外した途端にものの症状が再発します。

例えば食事のためにオーソシスを外すとその途端に顎関節に異常を感じます。

つまりおオーソシスを外すことが出来なくなり不自由な生活を送らなければならなくないます。

オーソシスを外しても再発しないようにするためには、オーソシスを使わなくても下顎安静位がで下あごの位置が維持されるように、ご自分の現状の歯を改造しなくてはなりません。

この段階の治療(2次治療)が終了したした段階ではじめて顎関節症の根本的な治療が終了したことになります。

この段階の治療(2次治療)は上下のあごの位置関係を作り直す治療なので「咬合再構成治療」といいます。

「咬合再構成治療」には次のようは二つの方法があります。

・補綴的交合再構成治療

   臼歯部の歯の長さを増して高さを高くする手段として人口物を歯に被せる(補綴)する方法

・矯正的交合再構成治療

 臼歯部の歯の長さを高くする手段として元の歯矯正治療で動かして上下のはを嚙合わせる方法
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5.顎関節治療の期間と費用

 顎関節症症状を改善するまでの初期治療の期間は通常、3~6カ月で終了します。

 そのあとの噛み合わせを治す段階の二次治療は、治療手段によって異なります。

 噛み合わせを補綴的な手段(被せ物)の場合は治療する歯の数などによっても異なりますが、
 半年から1年位が必要です。

 歯を動かして上下の歯を不定愁訴が起こらないあごの位置で噛み合うようにする矯正治療の
 場合には2年から5年位が必要です。
  費用の目安

    1.当院では、一回の治療に費やす時間、治療の難易度、医師の知識と経験、技術力にもと
     づいて費用を設定しています。

    2.噛み合わせ治療はかなり高度な治療なので残念ながら保険治療には対応していません。

    3.治療費については、治療を開始する前に概算をかならずお知らせします。
     十分に理解し納得されたうえで治療を受けてください。

  費用の区分と金額

      A. カウンセリング(30分~120分)             5000円+消費税

    B. 一次治療(オーソシスによる症状の改善を目指す治療)

      噛み合わせの検査、オーソシスの制作・装着、調整3回分を含む、治療期間は3~6カ月
                               240,000円+消費税

    C. プロビジョナル治療(一次治療から二次治療への移行治療)
                              1歯20,000円x本数+消費税

    D. 二次治療(症状が安定した後の咬合再構成治療)

     1)歯列矯正治療による咬合再構成治療(治療の難易度と期間による)

     2)補綴的手段による咬合再構成治療

まとめ

・ 顎関節症の治療はその原因をしっかりと理解して行えば現在では比較的に容易に根本的に
  治すことが出来る病気になってきております。

・ 治療がうまくいくかどうかは、下顎安静の意味をしっかりと理解して下顎をその位置に導く
  ことが出来るかどうかにかかっています。