顎関節症

2018年10月16日|カテゴリー「顎関節症

 

顎関節症の原因

あご(下顎)の位置の異常がもたらす健康障害の中で最も一般的で、苦しんでいる人が多い疾患に顎関節症があります。
顎関節症の原因は比較的単純で解決に結びつきやすい疾患ですので、あらかじめよく理解しておいていただきたいと思います。
顎関節症はあごの関節の捻挫が慢性化したような疾患です。ものを噛むときの強大な力によって顎関節が破壊される病気です。
人間がものを噛むときの力は、その人の体重に匹敵するといわれています。体重60キロの人は60キロの力でものを噛みます。通常、その力はものを噛むために使われ、顎関節には及ばないのが普通です。
普段は奥歯か噛み合ってその力を受け止めるように作られているために、顎関節にはその力が及ばないようになっています。
しかし、歯がその力を受け止める役目を果たしてくれない場合にはその力が顎関節に直接及んで関節が破壊されます。
顎関節はそのような強大な力に耐えられるような構造には作られていないからです。そのために簡単に破壊されてしまうのです。
顎関節症の原因
顎関節症の患者さんの場合、下顎を安静位に導いて調べると下の写真のように、奥歯が低いために噛み合っていません。
このようなことは筋肉も顎関節も安静状態になるように導いて下顎の位置を下顎安静に導いて記録する技術がなければ明らかにすることが出来ません。
この患者さんお場合、普段はこのような噛み合わせではなく上下の奥歯はきちんと噛み合っています。そのためいくらお口の中を覗いてみても奥歯の噛み合わせに異常があるということは知ることができません。
つまり顎関節症の原因を診断することは出来ないのです。
顎関節症の原因
上の写真のような噛み合わせは歯がかみ合っていないので、一見不自然に見えますがこれがこの患者さんのあごにとっては楽な位置なのです。この位置だと顎関節も周囲の筋肉も楽で、緊張のない状態になります。
ところが同じ患者さんが、食事などのために奥歯を無理に噛み合わせると、下の写真のように噛み合います。一見正常でよく噛み合っているように見えますが、この位置(咬合位)でものを噛んでいると、長いあいだには顎関節が痛み、頭痛などさまざまな筋肉症状も出てきて体調が不良になります。
顎関節症の原因
顎関節症の原因
下の図は下顎安静位でのあごの関節の状態を示しています。あごの関節は正常で関節円盤も正常な状態を示しています。
しかし歯の噛み合わせは、奥歯がすいていて噛み合っていません。
顎関節症の原因
この患者さんにとってはこの顎の位置が楽な位置(安静位)で、顎関節にも周囲の筋肉にも緊張や不快感を感じていません。
しかし下の図のように無理に奥歯を噛み合わせると、あごの関節が痛み周囲の筋肉も緊張して不快な症状が出てきます。
その理由は奥歯のスペースを閉じるように無理に噛み合わせることで、顎関節はそのスペースの分だけ矢印の方向に上に押し上げられてしまうからです。その結果、顎関節の内部でクッションの役目をしていた”関節円盤”という大切は”部品”が前方に押し出されます。(ところてん現象)
顎関節症の原因
そのために口が開きにくくなったり、開閉の度に音がしたり、硬いものを噛むと痛くて噛めなかったりするようになります。
顎関節症の原因
上の図はその状態を分かりやすく示した模式図で、右の図は実際のCT画像です。
関節円盤という組織が前方に移動していることが見ていただけると思います。これが顎関節症の実態で、顎の位置の異常が原因で起こっています。その位置異常は奥歯の噛み合わせが低いことが原因です。奥歯が噛む力を十分に支えてくれないために、顎関節に過剰で暴力的な力が加えられてしまいます。その結果顎関節内部の構造が破壊されてしまうのです。
下の図は正常な顎関節の構造です。左は口閉じている時、右は口を開いている時のものです。
顎関節症の原因
下の図は関節円盤の前方転移を起こしている顎関節の図です。
左の図は前方転移が起こった直後のもので、右の図は病態が進行して関節円盤が変性を起こしてしまった状態のものです。
顎関節症の原因
このように関節円板に過大な力が加わる状態を放置しておくと、やがて関節円盤の一部に穴があいてクッションの役目をしなくなり、骨と骨が直接接するようになります。
それと同時に骨の形そのものも変形してしまうこともあります。
そうならないためには顎の位置異常を改善して顎関節に過剰な力が及ばないようにしなければなりません。
それには正しい診断が不可欠です。この場合の診断とはあごの位置異常の有無とその程度を調べることです。
それにはいくら口の中を覗いてみても判断することはできません。
とくに上下の歯を噛み合わせた状態をいくら観察しても何もわかりません。噛み合わせを調べるために、咬合紙を用いて、上下の歯の接触状態を調べることがよくおこなわれていますが、この場合にはほとんど無意味で正しい診断にはまったく結び付きません。
原因は”歯の接触状態”とはほとんど関係がないところにあるからです。正しい診断のために最も大切なことは、下顎を安静に導いてその時の顎の位置(安静位)を記録することです。そこで初めて下顎安静位と咬合位との差を知ることができます。
ほとんどの医療機関で顎関節症を正しく診断して治療することができないのは、このような考え方と技術に対する理解がないからです。
まとめ
顎関節症を確実に治療するためにはその原因を的確に把握してその原因を取り除くことです。
その原因を把握するためには下あごを下顎安静位に導かないと見えてきません。
そのためには下顎を安静位に導く方法とその位置を正確に把握してそこに下あごを的確に誘導するための装置を正確に作らなければなりません。
このようなアプローチを採用している施設は首都圏でもきわめて限られているために、顎関節症で苦しんでいる患者さんはなくなるこことがありません。