噛み合わせ症候群の診断と治療

2018年10月14日|カテゴリー「噛み合わせ症候群の診断と治療

 噛み合わせ症候群の治療

噛み合わせ症候群の治療

噛み合せ症候群の治療の目的は、楽な顎の位置で上下の歯が噛み合うようにすることです。
「楽な顎の位置」とは、顎関節も筋肉も生理的に安静状態にあるときの顎の位置のことです。この位置のことを専門用語では
「生理的下顎安静位」いいます。噛み合せ症候群は、この生理的下顎安静位で上下の歯が噛み合わずに、噛むたびに顎がそこ
からずらされることから起こる病気です。
そのため治療の第一歩は、上下の歯が噛み合うときに顎がずらされずに生理的下顎安静位にとどまるようにすることです。そのために、「オーソシス」という樹脂製の器具を下の歯の上にに装着して使っていただきます。オーソシスを装着することで下顎は常に下顎安静位に保たれて、顎関節や筋肉を護ります。またすでに破壊されて障害をうけている組織を安静に保って回復するのを助けます。
噛み合わせ症候群の治療
上の写真は、「オーソシス」とそれを装着したところを示しています。オーソシスは、上の写真のように下の歯に被せるように
して使用します。基本的には夜間就寝時に使用していただきますが、できるだけ長時間使用していただく方が効果があります。
噛み合わせ症候群の治療
このようにして安静状態を保つことで、破壊されて関節や緊張した筋肉が修復されていき、正常な状態に戻すことがで出来ます。
それに伴って、症状が緩和されていきます。症状が緩和されて、快方に向かったことが確認された段階でこの治療法の正しさが
証明されますが、ここまでをこの治療法の一段階と考えています。
効果は早ければ2週間で現れることもあります。治療期間は長くても3カ月以内に終わります。

しかし問題はその後です。オーソシスを使用していると顎の位置が修正されて症状は快方に向かうのですが、オーソシスを外すと元の位置に戻りますので、症状が再発します。

外しても再発しないようにするためには、オーソシスを使わなくても下顎安静位の顎が維持されるようにしなければなりません。そのためには現在ある元の歯の噛み合わせを変更して、オーソシスを使わなくても下顎安静位が保てるようにしなければなりません。

この段階の治療が終了した段階ではじめて、噛み合わせ症候群の治療は終わったことになります。

 

一次治療と二次治療
オーソシスを使って、辛い症状がとれるまでの治療を一次治療としています。二次治療は一次治療で効果が確認された顎の位置をご自分の歯で維持できるように、元の歯の状態を変更する治療のことです。

一次治療はオーソシスを使って正しいあごの位置をテストしながら症状が緩和する位置を求める治療です。そして完全に症状が緩和したことが確認された段階で、そのときの顎の位置は健康を維持するために大切な位置であることがわかります。

このような試行錯誤の段階を経たうえではじめて、どのように元の歯を治療すればよいかを決定することができます。そうすることで無駄な治療をしないで済ませることができます。

二次治療でおこなわれる治療は顎の位置関係を作り直す治療なので、「咬合再構成治療」といいます。

これには次のような方法があります。
1)補綴的咬合再構成
2)矯正的咬合再構成
3)外科的咬合再構成


1)補綴的咬合再構成

元の歯に詰め物や被せ物をして歯の形を変更し、顎の位置を下顎安静位に変更する方法です。

2)矯正的咬合再構成

歯を削ったり被せたりしないで、歯を移動させてあごの位置を変更する方法です。

噛み合わせ症候群の治療

3)外科的咬合再構成
外科的咬合再構成は、歯の移動や形態の変更では咬合を再構成(顎位の一致)出来ない場合におこなわれます。顎骨を切断してずれを修正します。当院ではまだ経験していません。

 

まとめ

噛み合わせ症候群の治療は下のあごの安静を保つようにすることで達成されます。そのためには下顎安静位の位置を正確に測定
してその位置が正確に保たれるようにマウスピースの一種であるオーソシスを作る必要があります。

そのためには下顎の位置を正確に測定するための専用の装置と測定する技術が重要になります。

さらにオーソシスを装着した後は正確に下顎安静位の下顎が誘導されているかを検証しながら修正していく技術も重要です。

そのような技術を習得するためには長年の研鑽と臨床経験が不可欠です。

 

 

 

2018年10月14日|カテゴリー「噛み合わせ症候群の診断と治療
まとめ

噛み合わせ症候群の検査と診断正確な診断が確実な結果を生む

治療を成功に導くためには、正しい診断がおこなわれなければなりません。
当院の治療が多大な成果をおさめている理由は原因を正確に把握し、科学的で客観的なデータにもとづいて診断を行い、
それにもとづいて正確な治療をおこなっているからです。

噛み合わせ症候群は、普段ものを噛んでいるときの顎の位置(咬合位)と、顎が楽でいられる本来の顎の位置(下顎安静位)
とが一致していないことが原因で起こっています。
治療はその二つの顎の位置(咬合位と安静位)を一致させることを目的としておこなわれており、それが正確に行われれば
確実な成果が得られます。

そのずれを正確に一致させるためにはこの二つの顎の位置が、どのくらいずれているのかを正確に知る必要があります。

この二つの顎の位置のずれの大きさは、1ミリの何分の1という場合もありますので、これを狭い口の中、まして肉眼で
確認することはほとんど不可能です。

そのずれを正確に測定して客観的に記録し比較するためには、高度なテクノロジーの力をかりなければなりません。

当院ではそのために、下顎の位置を正確に測定する装置(CMS)※と、筋肉の安静状態を調べるための筋電計(EMG)※を
使用しています。

顎の位置を正確に測定する装置
今から40年も前にこの目的のための計測機器が開発されました。そして一部の臨床家のあいだで使用されてきて、
度々の改良を加えられながら今日にいたっています。

下の写真は、7回目の改良の結果現在使われている、K-7という検査装置です。

顎の位置を調べる装置

この装置を使うと、口の中をのぞかなくても、歯を噛み合わせているときの顎の位置と安静にしているときの顎の位置を、
コンピュータの画面の上で比較してその差(ずれ)を知ることができます。

この装置ができたおかげで、噛み合わせ症候群の診断と治療は飛躍的に進歩しました。
初めて科学的で客観的なデータにもとづいた診断と治療ができるようになったのです。
噛み合わせ症候群の診断と治療は、顎の楽な位置、すなわち下顎安静位を基準にしています。
診断はそこからの距離を測ることであり、治療はその位置で機能ができるようにすることです。

下顎安静位は筋肉が安静であること大切な基準ですが、そのためには筋肉が安静であるかどうかが証明されなければ
なりません。そのために開発されたのが、筋肉の緊張度を計測するための筋電計です。

筋肉の安静状態を調べるための筋電計
この装置を使うと心臓の状態を調べるための心電計のように、咀嚼筋がどのくらい緊張しているのかなどの安静状態状態を
調べることができます。

この筋電計はおもに筋肉の安静状態を調べるために使いますが、そのほかにも、筋肉が正常に機能するかどうかを調べることができます。

下の写真は筋電計で電極を用いて筋肉の状態を調べているところです。

筋肉の状態を調べる筋電計

噛み合せ症候群の診断のポイントは、安静位と咬合位の位置的な関係のずれを調べることです。

安静位を調べて記録するためには、筋肉が安静状態でなければならないのですが、もし十分に安静状態でない場合にはできるだけ安静常態に導く必要があります。そのためには低周波治療器(TENS)を使います。

通常は「あごの力を抜いて楽にしてください」とお願いすればほとんどの場合、
あごの筋肉は安静状態になるのですが、噛み合せ症候群が進んで筋肉が硬直している場合には簡単に安静状態になりません。

顎を支えている筋肉のうちで一つでも安静ではなく硬直した状態の筋肉があると、そのために顎の位置がかたより、本当の意味での安静位が記録できない場合がでてきます。

顎を安静位の導く方法
筋肉の緊張状態を解きほぐして安静状態に導くためには、低周波治療器の一種であるTENSという装置を使います。検査する前にこの装置を約60分ほど使用して、筋肉のリラクゼーションをはかります。

顎を安静位の導く方法

TENSを使用する前に筋電計をもちいて筋肉の安静の度合いを計測しておき、使用後に再び計測して筋肉の安静状態を
確認します。

筋肉も関節も完全にリラックスした状態を確認した上で下顎の安静位を計測して記録します。

咬合位の計測は普段いつも噛んでいる状態で噛んでもらい、そのままの状態を記録します。

二つのあごの位置の差を表示する
K-7(顎運動計測記録装置)の画面上に二つあごの位置を教示して比較します。下の図はその画面を示しています。

図には2つの図形が表示されていますが、図の左半分はあごを横から観察している図で、右半分は前から見ているところを
表しています。(図の顔の絵を見てください)

二つのあごの位置の差を表示する
これは上のデータの図解です。
二つのあごの位置の差を表示する

このデータは噛み合せ症候群の重い症状をもっている患者さんのものですが、あごの力を抜いてリラックスした時のあごの位置と歯を噛み合せたときのあごの位置を示しています。ご覧のように二つのあごの位置は一致していません。

前後的に3.8ミリ安静位咬合位は後方にずれていることがわかります。さらに2.8ミリ低位咬合になっていることもわかります。

前方から見たデータでは上下方向の位置は一致していませんが、左右方向のずれはないことがわかります。
下の写真はそのときの患者さんの上下の顎の状を示しています。

これは顎関節とあ後の筋肉が緊張していないで安静状態であるときの顎の位置関係を示しています。(下顎安静位)

このようなあごの位置関係であれば、噛み合わせ症候群のような症状はでません。治療の目的はこのようなあごの位置関係を
保ようにするこてです。

二つのあごの位置の差を表示する
下の図は普段患者さんがものを噛むときに、上下の歯を噛み合せているときの状態です。(咬合位)
この状態では顎関節やあごの筋肉は安静状態を保つことが出来ないために噛み合わせ症候群の症状が出ます。
二つのあごの位置の差を表示する
一見よく噛めているようで問題はなさそうなのですが、この患者さんはこのように噛み合せると顎の筋肉や関節に無理な緊張
を感じて、長く噛んでいると頭痛や首、肩、関節などの部位に不快感や痛みを感じるようになります。
まとめ
噛み合わせ症候群の症状はあごの位置のわずかなずれでも発症します。そのずれは肉眼では観察することが出来ないほどの
わずか場合も少なくありません。
そのわすかなずれを正確に計測して修正することができなければ噛み合わせ症候群の症状を完全に解消することは絶対に
できません。
それは当院の40年近い長い臨床経験から確信をもって断言できることです。