噛み合わせが急におかしくなったらどうすればいい?

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何が起こっているか?

噛み合わせが急におかしくなった時に起こる症状は顎関節症の急性症状です。

それは顎関節に暴力的な力が加わって起こります。

暴力的な力とはご自分自身の噛む力です。

普段はその力は奥歯が物を噛むために使われていますがその奥歯の高さが低くなると顎関節に向かい関節が破壊されます。つまり一種の外傷を受けます

そのために顎関節症の急性症状が起こった時には顎関節の外傷が起こっていると考えて、それ以上噛む力が顎関節に加わらないようにして安静を保ち外傷が治るのを待たなければなりません。

その具体的な方法を噛み合わせ治療の専門医として解説します。

1.噛み合わせが急におかしくなったら

噛み合わせがおかしくなるというのは次のような場合だと思います。(急性の顎関節症)

 ・急に口が開けなくなる(開口量が1センチ以下)

 ・あごが痛くてものが噛めない(やわらかいものでも噛むと痛い)

 ・関節(耳のすぐ前のあたり)が熱く熱を持っていて押すと痛い

噛み合わせの高さのアンバランスがもたらした顎関節の損傷


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上の図のように奥歯の噛み合わせが低い場合には無理に歯を嚙合わせると右の図の矢印のようにあごが回転して関節頭が顎関節を強く圧迫するための顎関節は外傷のように損傷する。一種の外傷なので急性の炎症期には少しの圧迫でもかなりの激痛となる。

この時顎関節にかかる圧迫する力は強大でその人の体重に匹敵すると言われている。理論上は人は自分の顎関節を噛み砕くことができると言われている。

関節円板はちょうど膝(ひざ)の関節の半月板と同じ役目を果たしているもので損傷すると全体重がかかる場所なので歩行ができなくなる。

そのような重圧が顎関節に向かうことを防いでくれているのは奥歯の噛み合わせであり、その力を受け止めて関節頭が顎関節を損傷しないように守ってくれているからである。

しかし奥歯の噛み合わせの高さが低くなるとその役目を果たせなくなって、顎関節が次第に圧迫されて損傷されるようになる。これが顎関節症が発症する理由である。

関節円板の前方転移のために開口障害がおこる(口が開かなくなる)


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同じことを別の角度から見ると、図Aでは奥歯が低い状態を示しているがこの状態で図Bのように強く噛むと関節頭が顎関節を圧迫してクッションの役目していた関節円板が転移(ずれる)してしまう(青い部分)。クッションの役目を果たしていた関節円板が前方に転移した場合、関節頭が前方に移動する時の妨げになり口を開くことが出来なくなります。

顎関節のなかで起こっていること


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上の図は正常な顎関節と関節円板が転移した顎関節を示しています。

関節頭と関節円板の関係に注意して見てください。右の図で関節円板が関節頭の前方に脱出(転移)いています。これは円板を関節頭が後ろ上方に押し上げた結果おこったことです。この動きが急激に起こると急性の炎症が起きて激痛をもたらします。


低くなった奥歯の高さを補う


低くなった奥歯の高さを補って,噛んでも顎が回転しないようにするか強く噛まないようにする。

応急的な処置としては身近にある材料で臨時的に高さを補って強く噛まないようにして安静にする。

顎関節が強く圧迫されないよにして安静を保つと自然に顎関節の傷が治っていき矯正の炎症は収まる。


関節腔を広く保って顎関節を安静に保って炎症が収まるのを待つ


顎関節は関節頭の圧迫によって外傷的な傷を受けているので、関節腔(関節頭と関節窩の間の空隙)を広くとって圧迫力が及ばないようにしながら安静を保ちきずが治癒するのを待つ。


以上の2つのことを同時に行なう応急的な方法をお教えします



2.噛み合わせがおかしいときの簡単な応急処置法


歯の間に綿花かガーゼのような柔かい素材のものを丸めて挟み口が軽く開いた状態を保つ。

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こうすることで関節頭が上に挙がって関節を圧迫しないようにすることが出来る。

口を軽く開いておくことで関節空隙を広げて顎関節を安静に保ことが出来るのであとは炎症がおさまって傷が治るのを待ちます。

ただし顎関節の中で起こっていることは、外傷による炎症なので原因を取り除いても傷はすぐには治りません。少なくとも2~3日はこの療法を続けなければなりません。

効果を上げるための注意点


  1)噛むという意識を捨てて口を軽く開けておくための手段として咥えておくという感覚

  2)下あごをやや前方に出した状態で咥える

  3)一回、1~2時間、またはそれ以上の時間つづける

  4)食事はできるだけ柔かいものにして顎関節を傷つけないようにする

  5)鎮痛剤などは服用してもかまわないが、痛みが感じ難くなったことで強く噛み込む恐れが
    ある。
    そうなると顎関節を再び傷つけることになり治癒が遅れる可能性がある。

柔かくて清潔な素材を使用して写真のよな筒状のものをつくる

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素材としては綿花やガーゼ、布切れ、手近なものとしてはティッシュペーパーでもよいが、唾液で解けてしまう可能性があるのでのであまり好ましくない。

写真のように長さ2~3センチ、直径1センチ程度の筒状のものをつくる。

3.噛み合わせが悪くならないための予防法

悪い噛み合わせは顎関節や筋肉痛の原因になることが多いが、噛み合わせない限り害はない。噛み合わせることでその悪い影響がでてくるので噛み合わせが悪い場合にはできるだけ噛み合わせないことである。

また嚙合わせることでその予兆を感じることができるので、そのような時には強く噛みこむことを避けるようにすることで予防するこたが出来る。

噛むたびに不快感や痛みを感じるようであれば、応急処置のところで紹介したクッションを使ってみることをお勧めします。

それは悪い噛みあわせが全身に悪い影響をもたらすことを遮断する効果があるので症状の発現を防いでくれます。

また悪い噛み合わせからの影響を受けなくなることで、体調不良や筋肉痛などの症状が一時的に軽減して楽に感じるようになるはずです。

4.根本的な治療法は?

噛み合わせを本格的に治療するためには次の4つのステップで治療します。 


  4-1.噛み合わせがわるいかどうか調べる

  4-2.あごのの筋肉の緊張をとって安静なあごの位置をさがす

  4-3.安静なあごの位置を維持するための装置をつくる

  4-4.結果をみてそのあごの位置で歯が噛み合うようにする

カウンセリング


 ・ お悩みのあらまし、これまでの経過などを詳しくお伺いします。

 ・ 噛み合わせと関連した症状かどうかを判断します。

 ・ 症状を改善する治療が可能かどかを判断します。

 ・ 治療方法・予後・費用などをご説明して、受診の意思の有無をお確認します。


噛み合わせの検査


 ・ 噛み合わせによる姿勢の変化を全状態を調べます。

 ・ 筋電計を装着してあごの筋肉の緊張の度合いを計測します。

 ・ TENS(マイオモニター)を約1時間使用してあごの筋肉の緊張を解き、あごを安静に導き
   ます。

 ・ その時のあごの位置と現在の噛み合わせの位置をCMS(K7)の画面上で比較します。

 ・ 噛み合わせが症状の原因になっている火どうかを最終的に判断します。

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表面電極筋電計を用いてあごの筋肉の緊張の度合いを計測する

下顎を安静に導く


 ・ TENS(マイオモニター)を45~60分使用してあごの筋肉の緊張をとります。

 ・ 緊張がとれてあごの筋肉が安静になっているかどうかを筋電計で確認します。

 ・ CMS(K7)を装着してその画面上で下顎の安静位を確認して記録します。

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あごの筋肉の緊張をとって安静なあごの位置(下顎安静位)を探すために用いるマイオモニター


下顎安静位の咬合採得


 ・ 確認できたらその位置関係を咬合採特用の材料を使って記録(採特)します。 

 ・  それをあらかじめ歯の型をとって作っておいた石膏模型にあてはめて咬合器に付着します。

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下顎運動追跡記録装置(CMS K7)で顎の動きや位置を計測して診断に役立てます
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上下のあごの位置をCMSK7で確認したら患者さんお石膏模型を咬合器に付着します。

  オーソシスはこの咬合器の上で作ります。

オーソシスの制作 

 ・ その咬合器上で下顎安静位を維持するためのオーソソーシス(マウスピースの一種)を制作
   します。

オーソシスの装着

 ・ TENS(マイオモニター)を45~60分使用してあごの筋肉を安静に導きます。

 ・ オーソシスを口腔内に試着してCMS(K7)の画面上で下顎安静位を確認します。

 ・ 確認して特に問題がなければその時からオーソシスを使用してもらいます。

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オーソシスの調整


 ・ オーソシスを装着したら2週間後に来院していただき使用状況、症状の改善の度合いをなど
   を拝見させていただきます。

 ・ またENS(マイオモニター)を45~60分使用してあごの筋肉を安静に導いたあとで、
   CMS(K7)を装着して下顎安静位が維持されているかを確かめます。

 ・ 下顎安静位が保たれていなかったり、ずれている場合にはオーソシスを調整します。

 ・ そのあとは一カ月後に来院していただき、同様の経過観察と調整を繰り返します。

 ・ 通常は、2~3か月後に症状は落ち着きます。

 ・ 症状が落ち着いたらしばらくそのままオーソシスを使っていただき、次の段階の治療に移行
   するかどうかを判断します。


第二段階の最終治療への移行

 ・ オーソシスを装着して顎位を変更した結果症状が改善したとしても、オーソシスの使用を
         やめたとたんに症状は再発します。

 ・ そうならないためにはオーソシスを永久に使い続けなければなりません。

 ・ オーソシスを使わなくても症状が再発しないようにするためには、オーソシスで維持してい
   たあごの位置(下顎安静位)でご自分の歯が噛み合うように歯を作り直さなければなりませ
   ん。

 ・ 新しいあご位置(下顎安静位)で上下の歯が噛み合うように咬合を作り変えることを咬合再
   構成といいます。

2種類の咬合再構成の方法

 ・ 咬合再構成の方法には、ご自分の歯の上に人工の材料で被せ物をして下顎安静位を維持する
   方法と、ご自分の歯を移動させて下顎安静位で噛むようにする矯正治療を行う方法がありま
   す。

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補綴的咬合再構成治療

 ・ ご自分の歯の上に人工の材料で被せ物をして下顎安静位を維持する方法を補綴的咬合再構成
   といいます。

 ・ この方法の利点は比較的短時間で治療を終わらせることができることですが、欠点は人工の
   被せ物を固定するためにご自分の歯を削らなければならないことです。

 ・ 補綴的再構成治療ではいきなり歯を削って最終的な補綴物を装着する前に、プロヴィジョナ
   ル予備的な治療)をおこなってから最終的な治療をおこないます。

矯正的な咬合再構成治療

 ・ 矯正的な咬合再構成はご自分の歯を傷つけずに歯を移動して上下の歯が噛み合ううように
   する治療ですが、技術的にかなり難易度が高く、治療時間も年単位で長時間の治療が必要
   になります。

5.費用は 

    1.当院では、一回の治療に費やす時間、治療の難易度、医師の知識と経験、技術力にもと
     づいて費用を設定しています。

    2.噛み合わせ治療はかなり高度な治療なので残念ながら保険治療には対応していません。

    3.治療費については、治療を開始する前に概算をかならずお知らせします。
     十分に理解し納得されたうえで治療を受けてください。

      A. カウンセリング(30分~120分)             5000円+消費税

    B. 一次治療(オーソシスによる症状の改善を目指す治療)

      噛み合わせの検査、オーソシスの制作・装着、調整3回分を含む、治療期間は3~6カ月
                               240,000円+消費税

    C. プロビジョナル治療(一次治療から二次治療への移行治療)
                              1歯20,000円x本数+消費税

    D. 二次治療(症状が安定した後の咬合再構成治療)

     1)歯列矯正治療による咬合再構成治療(治療の難易度と期間による)

     2)補綴的手段による咬合再構成治療  

6.まとめ

 1)顎関節症の急性症状はかなり辛い激痛と開口障害をともなう疾患である

 2)その原因は奥歯の噛み合わせが低いことである

 3)奥歯の噛み合わせが低いことで顎関節に破壊的な力がおよぶことが防止できずに顎関節が
   発症する。

 4)噛みこむことで顎関節に破壊的な力が及ぶので、対策としては噛みこまないようにする
   ことである。

 5)口を閉じて噛みこまないようにするために柔らかいクッションを用意して上下の歯の間で
   咥える。

 6)このクッションは綿花やガーゼのような柔らかい素材で自家製で用意する。

 7)顎関節の急性炎症が消退するためには2~3日必要なので続行すして炎症が治まるのを待つ

   8)その間はできるだけ柔かい食事で強く噛みこまないように注意する