噛み合わせ矯正のまとめ。どんな時には矯正治療をしたほうがいいの?

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噛み合わせを治すためには二つの方法があります。

歯に被せ物(人工物)をして歯の形をかえて噛み合わせを治す方法と、矯正治療で自分の歯を動かして上下の歯が噛み合うように治す方法です。

そのどちらの方法がいいかはそのときの状況によりますが、ここでは矯正治療で歯を動かして噛み合わせを治す方法について説明させていただきます。

矯正治療で歯を動かして噛み合わせを治す場合には歯を削ったりして傷付けないですむという利点がありますが、その代わりに治療期間が長く、煩わしい装置を長く付けていなければならないという欠点があります。

被せ物をして噛み合わせを治す方法の場合には、歯を削らなければならなかったり、被せたものが取れてしまったりする心配がありますが、その代わりに治療期間が短くてすむという利点があります。

ここでは両方の治療法を実際に長年行ってきて多くの不定愁訴を解決してきた噛み合わせ治療の専門医の立場から解説させていただきます。

1.矯正治療の出番は二次治療から

矯正治療は噛み合わせを治すためにはとても有効な手段ですが、はじめから全ての噛み合わせの治療を矯正で行うことはお勧めできません。

矯正治療には得意な分野と不得意な分野があります。

それを知って使い分けないと効率が悪く、そのうえ治療効果が得られなかったという結果で終わってしまう可能性があります。

矯正治療は不揃いな歯をきれいに並べたり、狭い歯列弓を広げたり、歯をのばしたり縮めたりとかダイナミックな歯の移動をするためには大変有効ですが、下あごと上あごの位置関係を微妙に調整て不定愁訴をなくすための治療に使うのはあまり効率的ではありません。

噛み合わせの治療の目的は不定愁訴を解決することですが、不定愁訴は上下のあごの位置関係が悪いために起こってますので、不定愁訴を解決するためには上下のあごの位置関係を微妙に調整しなければなりません。

そのためには上下のあごの間に挟むようにして使うマウスピースのような装置をつかって上下のあごの位置関係を調整します。

マウスピースですと上下のあごの位置関係を自由に調整することができるので不定愁訴を起こさないあごの位置(下顎安静位)をみつけて比較的短時間で不定愁訴を解消することができます。

矯正治療は不定愁訴をおこさないあごの位置が見つかって不定愁訴がある程度解消したあとでそのあごの位置で上下の歯が噛み合うようにする治療のためにつかうと大変有効でよい結果を得るることができます。

2.噛み合わせ治療のながれ

噛み合わせの治療は上下のあごの位置関係を修正して不定愁訴を解消するための治療とそのあとで上下の歯が噛み合うようにするための治療に分けて考えると合理的です。(一次治療と二次治療)

一次治療は不定愁訴を解消するという噛み合わせ治療の目的を達成するために行ないます。二次治療はその状態が維持されるように噛み合わせを治す治療です。

二次治療は一次治療で不定愁訴が解消するあごの位置がみつかったあとでその位置で上下の歯が噛み合うようにする治療なので、不定愁訴が解消される位置(下顎安静位)が見つからなければ行うことはできません。

さもなければ不定愁訴が解消されるかどう分からないのに複雑な噛み合わせ治療に取り組んでしまうということになりかねません。

3.二次治療にはこんな種類がある

不定愁訴を治すために下あごを下顎安静位に導くと臼歯部がかみ合わずに大きく開いてしまうというような場合が少なくありません。

下の図の左側の図は下あごが楽ではない顎のの位置でかんでいて不定愁訴が起こっているかみあわせですが、右の写真は下あごの力をぬいて顎を楽にしている下顎安静位での上下の歯の対向関係示しています。

このように歯を咬み合わせるためにあごが楽ではない位置で無理に噛み合わさせないで力を抜いてあごを楽にするようにすると不定愁訴が楽になることが少なくありません。
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このような下あご位置(下顎安静位)なら不定愁訴がおこならいということは実際にオーソシスを使って確認することができます。実際にこの位置で不定愁訴がなくなれば噛み合わせ治療の第一の目的が達成されたことにます。

次の目標はこの位置で上下の歯が噛み合うようにしてオーソシスを外しても不定愁訴が再発しないようにすることです。

噛み合わせの治療の二次治療ではこのギャップをつめて上下の歯がしっかりと噛み合うようにすることですが、その方法には下の図のように二つの方法があります。

下の図の右上の図はこのギャップを埋めるために上下の歯の上に被せ物(補綴物)をして歯の高さを補って噛み合うようにする方法を示しています。(補綴的咬合再構成治療)

下の図の右下の図は歯の形はそのままで、上下の歯を少しずつ動かして噛み合うようにする方法を示しています。(矯正的咬合再構成治療)
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ここでは歯を少しづつ歯を動かしてしっかりとした噛み合わえをつくる「矯正的咬合再構成治療」についてもう少し詳しく説明させていただきます。

4.矯正治療で治した方が絶対にいい場合とは?

ここでは矯正的咬合再構成治療を選択する方が良い場合、あるいはそれしか他に方法がない場合について解説させていただきます。

それは大きく分けると次のようなな場合になります。

1.上下の臼歯部に開き(ギャップ)が大きすぎる場合

2.上下の歯列弓の拡大が必要な場合

3.歯並び乱れすぎている場合(歯の叢生)

4.前歯部のオープンバイト(開咬)

5.歯の捻転、傾斜がきつい場合

6.咬合平面のみだれが大きい場合

以上のそれぞれの場合について説明させていただきます。
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この図のように臼歯部の歯が短くて上下の歯の間に大きなギャップがある場合には、上下の歯に被せ物(補綴物)を被せて噛み合うようにするとそれぞれの歯だけが長くなり不自然な形の歯になってしまいます。

また穂の形態的にも歯冠と歯根の比率である歯冠歯根長比率がくるうので力学的のも望ましくありません。

結果的には生理的な口腔にはならずに発音障害などが起こることがあります。

また歯をたくさん削らなければならなかったりすて穂の寿命を著しく縮めることにもなります。

このような場合にはそれぞれの歯を少しづつ矯正治療で動かして噛み合うように治療したほうが奇麗で生理的に仕上げることができます。

その方がそれまでの歯を自然な形態のま使うことができますので発音がしにくくなったりすることもありません。

また歯だけが伸びて長くなるのではなく周囲の歯槽骨も一種に延びてくるので全体的に生理的な形態の仕上がりになります。
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この図のように歯列弓(アーチ)がせまくなってV字型をしている場合にはアーチを広げる治療が必要な場合があります。

そのような場合には矯正治療でアーチを広げてU字型にすることができます。

補綴治療ではアーチを広げることはできません。出来たとしても歯根と弛緩の形態がねじれたような形になり、歯の清掃性も悪くなる恐れがあります。

矯正治療でアーチを広げると不揃いな歯並びも同時にきれいに整えることができます。

その方が健康な噛み合わせをつくることができて、見た目も良くよく噛めるかみわせを構成することができます。
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この図のように歯並びが乱れている場合には健全な上下の噛み合わせを構成することはできません。

このような乱杭歯をきれいに歯並びにする方法は矯正治療しかありません。

このような歯並びでは見た目が悪いだけではなく、歯の衛生状態を清潔に保つことも難しいので歯の寿命にも影響します。

もちろんこのような歯並びを補綴治療で治すことは出来ません。
出来たとしても見た目も衛生面でも良い歯並びにすののは容易ではありません。
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このように奥歯だけが噛み合っていて前歯がかみ合わずに開いた状態のままになる噛み合わせを
開口(オープンバイト)といいます。

こういう咬合は矯正治療でしか治せません。

これを無理に補綴治療で治そうとすれば不自然な歯並びになり、すごく見苦しい外観になります。

矯正治療で治す場合、一年半から二年位の治療期間が必要です。
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これは上の前歯が内側に傾斜して下の前歯に被さるように噛み合っている歯並びです。

下の前歯がよく見えないようになっている場合もあります。

別名で過蓋咬合(かがいこうごう)とも呼ばれている噛み合わせで臼歯部が低くなている場合もあります。

このような場合も矯正治療で治すのがベストです。

無理に補綴治療で治そうとすると、歯の神経をとって不自然は形の継ぎ歯(継続歯)などになりますが、歯の寿命は著しくみじかくなります。

このような歯並びの方にはいわゆる「噛み合わせ症候群」といわれるよな体調不良で苦しんでいるかたが少なくありません。臼歯部が低く下顎が後退していることが多いからです。
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これは下の歯列を横から見たところですが、歯並びの中央のところが低くへこんでいて揃っていません。

そのため歯並びの噛む面を連ねた面(咬合平面)が連続したきれいな面になっていません。

そのために対合する上顎の歯列との噛み合わせがうまくいかずに不定愁訴の原因となります。
円滑な咀嚼運動を営むことが出来ませんので、きれいな面に整えなくてはなりません。

軽度な場合には補綴治療でもある程度改善することはできますが、限界があります。

この図のような場合には下の前歯が内側に傾いていますのでそれも同時に治すということになると矯正治療で治したほうがよいことになります。

5.矯正治療で治した実際の例を紹介

一次治療で不定愁訴を解消したあとで実際に二次治療で矯正的な手段により咬合を再構成した症例を紹介します。

患者さんは当時45歳の女性で数件の噛み合わせ専門医でスプリント治療をうけていたのですが、きちんと噛めないことと月に8回薬を飲むほどの頭痛、肩こり、首、背中の痛みを訴えて来院されました。
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上の写真は初診時の症状を示しています。

健康調査表を記入していただいたところ、上記の症状のほかに、目の疲れ、不眠、寝起きの悪さ、動悸、疲れやすさなどの症状を訴えておられました。

噛み合わせに関する病歴としては20年ほど前から顎関節症の治療を受けておられたとのことです。

噛み合わせ専門医のところで受けているスプリント治療自体にあまり納得がいかず、調整中に痛みが出たこともあったので転医して来院されました。

まず診断の段階で下顎安静位をさがしました。

そしてその後の位置(下顎安静位)で石膏模型を咬合器に付着してみました。それが下の写真です。顎の力を抜くと奥歯が噛み合わないのがのが分かります。
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このように筋肉の力を抜いて緊張していないこの楽な状態が保たれていれば不定愁訴はおこりません。普段はすべての歯が噛み合うように噛んでいますが、そうすると途端に不快感とともに不定愁訴がはじまります。

実際に噛み締める度に不快感を感じることになるので歯を咬み合わせないで口を軽く開けていたほうが楽なのです。

そこで下顎安静位が保たれるようにするための装置(オーソシス)つくって装着してもらいました。
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上の写真は下顎安静位をたもつためのオーソシスを下の歯に装着しているところを示しています。

透明な樹脂で作られているので見えにくいかもしれませんが下顎安静位に下顎を保持しているところを見ていただけると思います。

オーソシスにはこの写真のように取り外しができる可撤式のものと歯の上に接着してしまう固定式のものがあります。

オーソシス装着後の症状の変化

オーソシス装着後19日目の症状の変化

頭痛はまだあるが身体が軽くなった
以前より良く眠れるようになった
背中は良くなったが腰痛が強くなった
全体的には良くなっている
顎関節の左の方がガックンとなった
下顎を後ろに引いてしまう癖がまだある

オーソシス装着後一カ月半後の症状

頭痛はまだある
背中の痛みは気にならなくなってきた
眠りは以前よりさらに改善された

オーソーシス装着して体調がほぼ改善されたので一次治療を終了して二次治療をすることにしました
二次治療は下顎安静が見つかってその下あごの位置でオーソシスをつくり不定愁訴を解消することができることが確認されたあとで行います。

二次治療の目的は下顎安静位で上下の歯が噛み合うようにすることです。

そのためには歯に被せ物ををして歯を高くして噛み合うようにする方法と、矯正治療で歯を動かして噛みあうようにする方法があります。

この患者さんの場合には矯正治療で上下の歯が噛み合うようにするすることにしました。

矯正治療開始
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矯正治療は下顎安静位を見失わないようにするためと症状の再発を防止するために下のあごにオーソシスを装着したままの状態で上顎から治療を開始しました。

約一年後、上下の歯列も整ってきて顎位も安定してきました。奥歯が噛み合ってきています。
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さらに一年後上下の噛み合わせはさらに安定してきますた。もちろん不定愁訴は再発していません。
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それからさらに一年後に装置を外して矯正治療を終了しました。
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治療期間はかなり長くなってしまいましたが下顎安静位で上下の歯が同時に噛み合うようにするという目的は達成することができました。
もっと治療期間を短縮することが今後の課題です。

まとめ

噛み合わせ治療の最終段階の治療は不定愁訴が起こらない下顎安静位を探して上下の歯が噛み合うようにすることです。

そのためにはあらゆる面で補綴治療より矯正治療を用いることのほうが優れていることは明らかです。

しかし技術的に未開拓な分野でもでもあるので治療期間が長くかかり、習熟している臨床家がすくないという問題点があることは残念なことです。