噛み合せと全身の健康

噛み合せ(咬合)と全身の健康とのあいだには密接な関係があるということは、疑いようのない事実です。 しかしこの考えかたは、米国を中心とした学会では否定されています。つまり学問的に実証することができないからです。しかし日常の歯科臨床にたずさわっていると、わずかな噛み合せの異常でも肩や首筋の筋肉が痛んだり、頭痛がしたりすると訴える患者さんによく遭遇します。そしてその噛み合せの異常をとってあげると、それらの不快症状も消えてなくなるというこをしばしば経験します。これは事実であり、多くの歯科医と歯科にかかっている患者さんたちが経験していることです。

噛み合せが原因でおこる不快症状を「噛み合せ症候群」とよんでいます。これは当然学問的に認められた病名ではありません。一部の臨床家のあいだで使われている言葉です。これと関連している病名に「顎関節症」といわれるものがあります。これはあごの関節のところが痛んだり、動きが悪くなったりする病気ですが、必ずしもあごの関節のところだけにとどまっているわけではなく、首や肩の筋肉や顔面の筋肉の痛みとも関連していることが多いので、これらを総称して「噛み合せ症候群」とよぶことにしています。 欧米ではTMD(Tenporomandibular Disorder)=側頭下顎部障害とよばれいます。

現在のところTMDの原因(病因)は特定することはできないので、さまざまな原因がからみあって発症するということになっています。そのために一つの治療法、たとえば咬合治療だけを行うのではなく、運動療法や心理療法、薬物療法などを組み合わせておこない、可逆的な治療にとどめるべきであるということが強調されています。治療のために歯を削ってしまうような不可逆的な治療は慎まなければならないということです。

このような考え方に統一されつつある背景にはこれまでTMDの治療法のなかで「咬合治療」というものがあまりにも前面にですぎて、強調されすぎたということがあります。その割には効果がとぼしく、決定的な治療成績をおさめることが出来なかったのです。訳も分からずに歯を削ってしまい、かえって病状を悪くしていまったという事例が続出したことも事実です。「咬合治療」は無効であり無関係であり、悪であるというレッテルが貼られたのです。それを裏付ける論文も続出しました。しかしこれらの論文のなかで取り上げられている「咬合治療」の概念は一面的であって全てを否定するにたる論拠とはなりえないというのが最近の考え方になりつつあります。

これまでの「咬合治療」の概念は、顎関節を中心に組み立てられてきた概念です。それを中心に歯の接触様式に異常にこだわった治療法を展開してきました。この考え方はTMDの治療にも役立たなかったばかりではなく、歯科の臨床(義歯を作ったりすること)でもあまり役立っていません。

この考え方に対して、筋肉と神経の複合体である「神経筋機構(Neuromuscular System)」 を重視する考え方が約30年ほど前にでてきました。具体的にいえば、神経と筋肉がリラックスして最も楽な下顎の位置を診断と治療の基準にするという考えかたです。これは下顎安静位とよばれていますが、歯の噛み合せ(咬合)がこの安静を乱していまい、そのために神経と筋肉が緊張して、過緊張の状態(凝り)や疲れ、自立神経の失調などが起こるのではないかと考えています。この考え方もまだ学問的には十分に証明はされていませんが、この考え方で診断と治療をすると治療成績が格段と向上するのです。義歯の噛み合わせもうまくできて、快適な義歯をつくることができます。

このホームページではこの考え方で診断をして治療した症例を中心に、できるだけわかりやすくこの考え方と治療法を紹介していきたいと考えています。

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